暁 〜小説投稿サイト〜
幻の旋律
第九話 加速する臨場
[4/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ラン・・」
誰かが入って来た。賢治は、懐かしい感覚に捕われ、慌てて扉を見た。
「・・・・」
幸代が店に入って来たのだ。
「あ!なぜあなたがここに!」
「え!」
幸代は、賢治を見た。
「深谷先生!」
「おおお・・俺達は意外と縁があるかもなハハハ」
「なにそれハハハハハ」
「何だ?元気がいいじゃないか・・俺心配したんだぜ!」
「ありがとう・・」
しばらく、2人は会話した。
「実は、今日ね、私の母の命日だったの・・」
「え・・そうだったの・・」

「毎年この日は寂しいと共に、ある人の事を思い出すの・・」
「ある人?・・」
「今夜は私の昔話に付き合ってくれる・・」
「ああ・・・」

幸代は、母子家庭で育った。裕福でなかったが、母と二人で仲良く暮らしていた。貧しいからこそたくましく成長し、やがて、ピアノを習い、幼いころからその才能を発揮し、やがて高校に入学し、進路を決める時、幸代は音大に進学を希望したが母は経済的に無理だと強く反対した。

「へえ・・・」
「東京の名門音大なら学費が半端ないでしょ・・普通の家庭では行けないよね・・」
「そうなのよ、家にはお金がないはずなのにね・・それがね・・」

しかしある日、母は幸代に言った。
「でも、あんたがそこまで言うのであれば、・・ただし条件がある。あるおじさんに会いなさい!」
母の言う通りに幸代は指定された場所に行った。そこは、巨大鉄橋の工事現場だった。やがて、作業着を着た男がちかずいてきた。
「幸代ちゃんだね・・」
「はい、そうです・・おじさんは・・」
「覚えてないかな・・・親戚のものだよハハハハ」
「おじさんところで、ここで何の仕事してるの・・」
「俺は、現場監督してる・・巨大鉄橋のな!」
「そうなの・・・」
幸代はその話に興味が全くなかったがしばらく聞いた。
「なんだかつまらなかったか・・・」
「そんなことないわ・・おじさん楽しそうだったから。まるで少年みたいだねハハハハ」
「そうか!面白かったかハハハハハ!」
「私ね、母子家庭で育ってね、お父さんがいないから、・・それで、今ふと思ったの!おじさんみたいな、パパがいたらなってね・・」
その瞬間、男は泣きそうになった。
「そうか・・・ハハハハハ親戚で残念だったな・・これも何かの運命だろう・・」
「そろそろ、時間だな・・」
その男はあまりのも複雑な思いでその場には居られなくなった。
「え・・なんで、今から仕事なんだ・・」
「そう、残念だわ、まだ話したかったよ・・」

「最後にね・・お前さんには、力強い人生をおくってほしい・・
人生というのはとてつもなく悲しい事もある・・
そんな出来事に遭遇したとき・・
「ベルヌーイの定理」が人生において成立してることを忘れないでほしい・・・

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ