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幻の旋律
第九話 加速する臨場
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そうです。その後、その婚約者によって育てられました。」
「その少年は対人に関する部分の記憶を失ってました。もちろん良蔵さんとの想い出と共に・・しかし、彼にとってはそれが幸せだったかもしれません・・・」
木村警部の声は震えていた。
「対人関係がうまくいかないその少年は、友達などいなかった。彼の友とは、高島にある大自然だったに違いありません。その後彼は、東京大学に進学、同大学院で数学の研究をしていますが・・彼の研究があまりにも流行からかけ離れ、斬新すぎとのことで学者達に相手にされなかった・・やがて日本数学学会から追放され、今は行方が分かりません・・以上の事実は、あるジャーナリストによる情報です。」
「その少年は、とんでもない頭脳を持っているんだな・・でもなんと不幸な奴なんだ・・記憶もないんだろな・・」
「はい・・おそらく・・」
「しかし、私は確信しています。その少年と、このサングラスの男は同一人物です!・・・」
「すなわち、この男は、私の兄貴ということになります。いま兄は、どこまで記憶が戻ったかは分かりません・・きっと、暗い過去の闇の中で何かを模索してるはずです。あの第七工事現場に現れ麻薬輸送ルートを暴き証拠を集めて我々に送ってくれたのも、良蔵爺さんに代わっての罪滅ぼしかもしれません。また、平賀組長の計らいも考えているはずです。自分が生かされた意味を・・・これら三人の男が、この有明沿岸道路を創立したのです・・あの最難関工事とされた第七工事現場、巨大鉄橋建設を最後に・・
その土台を完成させたのが、私の兄なのです・・・」
会場にいる警官達は、皆感激していた。

ガソリンはやがて底を突き車は止まり 二人は降りた。
「広大な松林なのね・・・」
「ああ・・」
「でも、海が綺麗で素敵な場所ね・・・」
「ここには、自然以外何もない・・
こんな美しい場所で豊かな情緒が生まれるんだろな・・」
「そうね・・それが美的感受性となり芸術が誕生するの・・」
「私は幼い頃ね。海岸沿いに住んでいたから・・母も油絵を描きながら、よくそう言っていたわ・・今思い出しちゃった・・」
「そうか・・やっぱりな・・・」
「何悟ってるの!私の事何も知らないくせに・・」
「なあ・・」
「うん・・・」
「このまま、ずっとここで暮さないか・・」
「冗談でもうれしいわ・・・
でもクラスの生徒達が私達を待ってるでしょ?・」
幸代は賢治にもたれかかった。
「それも、そうだな・・大牟田か・・
やはり俺は、逃れられないようだな・・
この宿命からは・・・」
賢治は寂しく呟いた・・

「しかし、この男の記憶が戻るその時・・・一体何が起こるのでしょう・・
自分を、殺しかけた滝沢!お爺である伊能良蔵を殺した佐々木!二人に復讐することでしょう・・
我々警官の使命とし
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