第106話『師匠』
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「なるほど……あ、私は"疾脚"よ。意味は文字通り。それにしても"風"はともかく、"晴"って何かしら? それがきっと君の力のキーだと思うんだけど……」
「言われてみれば……考えたこともなかったです」
能力は、基本的に主属性と副属性の2つで構成されている。晴登の場合、主属性は"風"で、副属性が"晴"という訳だが……如何せん"晴"が何を表しているのか見当もつかない。
ふと、『晴れてる時に強くなる』のかとも思ったが、今までそこまで恩恵を受けた気はしない。何なら、一番本気で魔術を使った林間学校のスタンプラリーの時は雨だったし。
「う〜ん、本人にもわからないなら、考えても仕方ないかな」
悩む晴登を見て、これ以上の言及は意味がないと思ったのか、風香はそこで話を打ち切った。
「それじゃあ話を戻すけど、空を飛びたいって言ってたよね?」
「あ、はい」
「レベル3じゃ無理……って言いたいところだけど、君の力が計り知れない以上、結論は出せなくなった。でもどちらにせよ、私自身が飛ぶことができない以上、力になることはできないの。だから──」
「だから……?」
いつか空を飛べるという希望をまだ持っててもいいのだと嬉しくなった矢先、風香が気になる言い方をする。その表情は先程までの申し訳なさそうなそれとは変わり、自慢げなものだった。
「代わりに私の技、"飄槍突"を教えようかな」
「……! いいんですか?!」
「君の力のことを知って、成長する姿をもっと見てみたいと思ったの。この技はきっとその糧になるはず」
なんと彼女が提案してきたのは、あの風による強力な突き技、"飄槍突"の伝授だった。
いつか盗みたい技とは思っていたが、まさか教えてもらえるなんて。空を飛ぶ術はわからなかったが、これはこれでラッキーである。
「今日だけで会得できるかは君次第だけど、少なくとも魔導祭期間中にはマスターできるよう頑張ろう」
「はい!」
風香の言葉に大きく返事を返す。
もし今日中に会得できれば、明日以降の本戦にも活用できるだろう。ここは気を引き締めて臨まなければ。
「よろしくお願いします、師匠!」
「ふふっ。その響き、悪くないね」
まずは形から入ろうと、とりあえず雰囲気的に師匠と呼んでみたら、風香はまた静かに笑ったのだった。
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