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幻の旋律
第八話 時間との共有
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ばいい・・君のメロデーを流れてる時間に乗せればいい・・そうすれば、皆と共有できるのだ!ただ、それだけのことだ・・」

彼女は感激した。
「先生・・・まるで音楽家みたい!」
「俺は、ただの数学教員だハハハハ」
このとき、一番驚いていたのは幸代である。

「この人、素人ではないわ・・時間との共有ですって・・この私でも考えた事がないわ。この人も幼い頃から音大を目指してしたの?今、誰に師事してるのかな・・
この人・・一体何者なの・・」
「先生!何だかやる気が出てきました!今から帰って練習します。ありがとうございました!」
生徒は元気よく出て行った。

「深谷先生、あの聴きたいことが・・」
幸代は聞いた。
「先生は、今どなたに師事を受けてるのですか?きっと有名な先生でしょ?そう言えばば、あの夜、体育館で、弾いてたでしょ?」
幸代は、あの夜の事を思い出した・・
「いや、恥ずかしいは・・先生を目の前にして話すとは・・」
「ああ・・そうだな・・・」
賢治も動揺した。
「まあ、あの夜の事は忘れてくれ・・」
賢治も同じことを思っていた。お互い苦笑いをした。
「いや、あの夜はごめんなさい・・先生、すごくうまかったから・・どこであの旋律を学んだのかなって思いまして・・・」
幸代は、苦笑いしながら言った。
「師事?誰にもしてないよ・・気が付いたらそうなったのだ・・まあ、俺も余り楽譜が読めないから、暗譜するしかないのだよ・・この作業がまた地獄まんだよな・・全く」
「楽譜、読めないの・・」
「いや、そういう意味ではなくて、楽譜を見ながらの演奏は出来ないね・・それが出来れば、俺も演奏幅が広がるのにな・・先生がうらやましいよ。だから俺は、テンポの速い曲なんて、とても引けないよ・・指が動くわけがないからね・・」
「そう言えば、先生はテンポが遅い曲しか弾いていなかったわ・・」
「そうなんだよ、まだ、初めて3カ月だからね・・でも、一日10時間練習したから、通常の人の3年分はしたことになるのかな・・
だから、俺は素人そろそろ卒業できるかね・・ハハハ
この年になってピアノを始めたこと誰にも秘密にしておくれ・・これは二人の秘密だ・・頼んだぞ!帰って俺も練習だハハハ・・」

幸代は茫然としばらく立っているだけだった・・
「え!何それ、3か月の素人があんな表現ができるわけ・・あの人異常だわ・・偉大な音楽家の生まれ変わりなのか・・」
「私は、全盛期、高度な演奏技術に執着していた。確かに私のピアノは日本最速だった。でもだめだったの・・
素人の彼にあって、私にないもの・・
それは、想像力と情緒性、そして時間の概念・・」
「さて、私もピアノを本気で始める時が来たみたいだわ・・帰って練習するわ・・」
賢治は幸代を、その気にさせてしまった。


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