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幻の旋律
第四話 伝説の測量師
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を見てな・・
あの人を思い出したのだ・・
俺にとって、いやそれどころか、この有明沿岸の住民達にとって伝説の人物だ・・
今夜は、お前に話さないといけない事がある・・」
組長はゆっくりと話始めた。

当時二五歳の時、犯罪犯し監獄に入った。
やがて愛想尽きた妻に離婚を迫られた。彼は毎日、世間への恨み、苦悩、絶望、孤独で苦しんだ。牢獄は昼でさえも暗闇であった。しかしある日、ある男が面会に来たのである。

「平賀!久しぶりだな!」
「伊能技師!なぜここに!」

二人の再会であった。
良蔵はゆっくりと話し始めた。

「俺には一人息子がいるが、俺の事業の後を継ぐ気がないらしい・・安定を求めて公務員になりよった!愚かな奴だハハハハ・・
お前さんと一緒に炭鉱の現場で仕事をして確信してるのだ。お前さんは、根性がある!それに、人の上に立つ力量があるのだ!」

良蔵は力強く言った。

「だが、残念ながら、お前さんには学歴がない・・どうせ、この兼務所に何年もいるのであれば、ここで学位でも取ってはどうだ!そして、お前は出所と同時に土木技術者として俺に従事しろ!お前が必要なのだ!そうすれば、いつの日か一度だけ娘に合わせてもらえるように手配する・・お前の娘は可愛いよな・・」

「なぜ俺の娘を知っているのですか!」
「これを見ろ!有明沿岸の測量図だ・・」
「有明海の・・」
「そうだ・・俺が歩いて書いたのだ!」
「は!」
「俺は、孫と二人で測量の旅の途中、お前さんの母子のお世話になった。しばらくその街に滞在したが・・そのときお前の存在を思い出したのだ!だからここに来た・・」
「え!俺の娘は元気なんですか・・」
「二人の子供はすっかり仲良くなってな・・・」
「私は、犯罪者だから娘には会えません・・でも娘が元気にしてる事だけ知り、それだけで十分です。」
「何死人みたいな事を言ってるんだ!このまま強盗犯として人生を終えていいのか!
これを見ろ!」
良蔵は再び測量図を見せた。そして数か所に丸をつけた。
「これらの地点に、橋を渡さなければならない!これは、お前の仕事なんだ!」
「何!」
「そうだ・・これがお前の生きた証になるのだ!そうすればいつ死んでも良かろうハハハハ・・では、作業現場で待ってるぜ・・じゃーな!」
そう言い残し良蔵は面会所から出ていった。

「なあ賢治!ベルヌーイの定理を知ってるよな。これは、土木工学で最も有名な定理だ、力学的エネルギー保存法則とも言われてる。すなわち位置エネルギーを、運動エネルギーに変換することが出来るという理論だ!」
「はあ?突然、何が言いたいのですか・・」
「やはり、お前は、ベルヌーイ定理の数理的側面しか理解していないようだなハハハ
まだお前には、この大定理に潜んでいる情緒というもの
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