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幻の旋律
第三話 十三階段
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致しました!」
「そうか・・ご苦労・・」
木村警部は無関心に返事をし、タバコに火を付けようとした。すると稲又警部補は、慌てて、マッチに火をつけ言った。
「どうぞ・・」
木村警部はゆっくりと最初の一拭きをし言った。
「なあ、稲又警部補・・時効とは何だ・・・」
「はい?・・それは・・」
「刑法で定められている捜査期限であります・・その昔、警察学校で教わりました!」
「そうなのか?・・・俺は刑法の授業中居眠りばかりしていたから、知らないぜ!ハハ」
「・・・・・・」
「冗談だよ・・俺の刑法には時効制度なんか存在しない・・
何故ならば、現在日本は、捜査技術以上に犯罪技術が高度化している。連中も真剣に法律を学んいでるためだ。それでは悪い奴らが逮捕できるはずもなかろう・・
時効の事件を追うことは無意味なのか・・
その前に、時間の概念とは一体なんだ・・・
なぜ一分は六〇秒なんだよ!一〇〇秒じゃだめなのか!」
稲又警部補は、返答に困っていた。
「後一年あれば・・過去に捕らわれるのは愚かな事なのか・・・」
そのとき高級車センチュリーが警部の前に止まった。

「警部!お迎えに参りました!」
部下の運転手は礼儀正しく、後部座席に案内した。
「どうぞ・・」
木村警部は、無表情に言った。
「先に帰ってろ・・」
「はい?・・」
「俺は、まだここにいる・・
もう少しだけ、この有明の風に吹かれていたい・・
今夜はそんな気分なんだ・・・」
「了解致しました!失礼致します!」
やがて、車の列は、走り出し、車内の警官達は、ただ一人残された木村警部に敬礼をした。やがて車も走り去り再び三池港は暗闇となった。
木村警部は港から有明海を眺めていた。

「親父・・あんたも、麻薬捜査をしていた・・
そして、何者かに殺された・・
二〇年前か・・犯人を見つけたところで、もう時効だがな・・・・
でも俺は、その犯人を捕まえる為に刑事になったんだぜ・・
そして、一体誰だ!葉山商事の件といい、麻薬運送ルートの情報まで俺に流した奴は・・
これらの出来事は関連してるのか・・・
そうだよな、親父・・なんか匂うぜ・・」
木村警部は、ここ三池港で自分なりの指命を強く感じたのだった。

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