第1部
第1部 閑話
閑話2 〜好きな食べ物〜
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のよりは少ないけどお弁当だよ。ユウリが喜ぶ顔が見たくて頑張って作っちゃった」
「……」
完全に予想外だったのか、驚いて声もでないようだ。そりゃあ今までお弁当作ってあげるだなんて言わなかったし、宿屋の厨房を借りて作ったのもユウリが朝の鍛練に行っている間だったから、まず気づかれることはなかったはずだ。
そんな中、まじまじとそのお弁当を見るユウリ。
「……見るだけじゃなくて、せっかくだから食べてほしいな」
「あ……ああ」
早く食べたあとの感想が聞いてみたい。私はつい急かすようにユウリに言ってしまった。
早速ユウリは、黒胡椒のかかった鶏肉をフォークで刺し、口に運んだ。そして飲み込むまで見届けたあと、彼の次の言葉を待つ。
「……美味い」
「本当?!」
私は嬉しくなって、思わず身を乗り出した。ユウリは若干後ずさったが、すぐに視線をお弁当に戻す。
「お前でも何か取り柄はあるんだな」
「取り柄ってほどでもないけど、料理は実家にいたとき手伝ってたからね。ちょっと自信はあるかな」
そう言って私は得意気になる。言い方はどうあれユウリに誉められて悪くない気分だ。
するとユウリは、再び鶏肉をフォークに突き刺すと、私の方へ差し出した。
「お前も食べるか?」
「え、いいの?」
朝早起きして作った私のお腹は空腹で限界寸前だった。なので鶏肉を目の前に突きつけられたとたん、たまらず私はそのままかぶりついてしまった。まずい、こんな食べ方、絶対食い意地のはった奴って思われる。
案の定、ユウリは仰天したような顔になったあと、やがて口を押さえて俯き、声を圧し殺すように笑った。
「本当にお前は色気より食い気だよな」
私が食べてる様をじっと見ながら、彼が言った。全くその通りです。反省してます。
私は顔を赤らめながらも鶏肉をなんとか飲み込んだ。そして俯き加減でユウリの失笑している様子をちらっと覗き見る。
ユウリの笑ってる姿なんて、滅多に見られないから結果オーライかな?
結局残りの料理も二人で半分ずつ分けあって食べたのだが、それでも結構お腹がいっぱいになった。調子に乗って作りすぎたらしい。
「本当に美味かった。ありがとうな」
「いえいえ、どういたしまして」
笑顔ではないものの、食べる前よりも大分柔和な表情でお礼をいうユウリ。正直なところ、こんなに率直に感想を言ってくれるなんて思ってもみなかった。
お礼を言われるのはくすぐったいけど、ユウリに喜んでもらえて本当によかった。
「今度はナギやシーラの分も作って皆で食べようね」
私がそう言うと、なぜかユウリは露骨に表情を歪めた。
「別にいいだろ、とくにあのバカザルの分は」
「そんなこと言
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