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MOONDREAMER:第一章(ノベライズ作品)
第一章 幽々子オブイエスタデイ
最終話 青への萌し
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この桃私の〜」
 玉兎の一人が広間に沢山用意された桃に手を伸ばす。
 そう、今行われている催しものは、綿月邸に成った桃を中心に様々な食べ物や飲み物を用意した宴会であった。
 これは以前に案があった事であるが、その時は豊姫が庭の桃を端からかき集めて食べてしまい没になってしまったのだ。しかし、今回は無事に行われたようだ。
「依姫、お疲れ様。侵略者に立ち向かった貴方と私と玉兎達に乾杯ね」
「それと、この場にはいませんが八意様の事も忘れてはいけませんよ」
「そうね」
 そして二人とも今は遠く離れた地上に住まう師に想いを馳せた。
 同時に依姫は姉である豊姫にも尊敬の念を覚えた。普段は桃ばかり追い回しているが、依姫の知らない所で損な役や汚れ役を引き受けている事を妹であるから察してるのだ。だから、今回は。
「お姉様ももっと桃を食べていいのですよ」
 そう豊姫を労う気持ちになるのだった。
「あら、珍しいわね。依姫がそんな事言うなんて」
「そうですね。だから宴会の時だけですからね」
「やっぱりそう言う方が依姫らしいわ。じゃあ桃のおかわりもらうわね」
 そんな和やかな姉妹の会話が行われていたのだった。
 ちなみに、侵略者に『勝った』とは豊姫は言わなかったのだ。最後には侵略の首謀者との知恵比べでは姉妹は『負けた』のだから。
 侵略の首謀者──八雲紫は、自分が豊姫に捕らえられて敗北すると見せ掛けて、他の者に知恵比べの画竜点睛を託したのだ。
 それを西行寺幽々子という、紫の友人にして亡霊の姫にして、以前玉兎の前に現れた者が行ったという訳だ。──綿月邸の酒を盗むという形で。
 これに綿月姉妹は『ぎゃふん』と言わされたのだ。強大な力を持つ二人が味わされた敗北であった。
 だが、その後の二人は絶望や憎悪といった感情は余り湧かず、それどころか不思議とどこか晴れやかな気持ちすら抱いたのだ。
 それは二人が今まで負け慣れていなかった所へ、本格的でない勝負の形で心を折られる事なく負けを知れたからだ。だから……。
「これはもう『復讐』するしかないわよねぇ〜」
「そうですねぇ」
 そう微笑み合う豊姫と依姫。その態度が示す通り本気で復讐心を抱いている訳ではなかった。
 そして、復讐を口実に地上と関わりが持てる事を喜ばしく思うのだった。侵略の首謀者八雲紫は以前月に攻めて来た時のように本気で制圧する気はなかったように見える。
 だから綿月姉妹は関わりたいと思うのだ。八雲紫が管理下に置く者達とは友好的な関係を築けるだろうと。それが八雲紫の目論み通りでも、それに乗ってやろうじゃないかという念が綿月姉妹には生まれていたのだ。
 英雄が登場する物語では基本的に悪の親玉を倒して話が完結してしまうものだ。
 だが今回の綿月姉妹の場合はその例に漏れるのであった。親玉を
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