第一章 幽々子オブイエスタデイ
第5話 気高き龍
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「はい?」
予想外のレミリアの答えに咲夜は呆気に取られてポカンとしてしまった。
「咲夜は前座なんだから、私が戦うまで勝っちゃ駄目」
ぷんぷんと悪ぶってレミリアはのたまった。
だが、これは部下の失態をかばう、武士道にも通じる配慮だろう。
それは依姫がかつて新入りの玉兎を『レイセン』と称して他の玉兎に紹介したのと同じ考えからくるものと言えるかも知れない。あれも、二人のレイセンの事を考えてかばうための行為だったからだ。
もちろんレミリアの場合は依姫の落ち着いた振る舞いとは違ってやや不器用であるが、これが彼女のやり方なのだろう。
そのような事は本当に残忍な侵略者なら出来ないだろう。レミリアは本気で月の都を攻めるような存在ではないのかも知れない。
そんな彼女の気遣いを察しているのか、咲夜は微笑ましく思っていたのだった。
一方、依姫の側では……。
「さすがです依姫様。あと3人ですね!」
主の勝利に勢いづいて玉兎の一人が言った。
「私には八百万の力がある。一人頭二つしか使っていないんだから──あと399万連戦しても勝てる計算」
「はあ」
尊大な物言いに玉兎は呆けてしまう。
『あと399万連戦しても──』そう依姫は言ったが、さすがにそんなに続けて戦ったら、神の力はあれど自分自身の身がもたないだろう。
だがこういう強気な発言はこの場で必要だと依姫は思っての事だった。そう言ったからにはこれから下手な勝負は出来ないぞと自分を追い込むため、自分に力を貸してくれる神への敬意のため、そして自分を応援する玉兎達を勇気づけるためであった。
「ところで、なぜあの人間は最後雷に囲まれたときに瞬間移動しなかったのでしょう?」
先程の戦いの内容に疑問を持った玉兎が依姫に質問した。それに依姫は答える。
「あの者は瞬間移動などできないってことよ。
移動したい場所までに身体を通せる隙間がある場合のみ移動できる。
私は最初の火雷神のときに気づいたわ。スカートの裾が焦げてるって……」
「さ、さすがですね!」
依姫の解説と彼女の着眼点に玉兎はただただ感心していた。
──だが、これはスペルカード戦のルールの一つ『避けられる隙間の無い攻撃をしてはいけない』というものに反するのであった。
その事に依姫は最初のスペルカード戦であるが故に把握出来ず、咲夜の方も月への旅の後すぐに依姫に捕らえられその後すぐに戦うといった切羽詰まった状況の中であったからそのルールを失念しており自ら『不当』な白旗を上げてしまったのだ。
つまり、依姫と咲夜のスペルカード戦の審判はまだ下っていないのであった。
◇ ◇ ◇
「さあ、次は誰かしら?」
真相は反則勝ちではあれど、勝利を受け止めたものは次へのステップを生み出す力を得るものである。その
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