第十二章 真紅の魔道着
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剣と剣がぶつかり合う、鈍く激しい音が響いている。
二人の魔法使いが、戦っている。
水色を基調とした魔道着と、赤を基調とした魔道着の、二人が。
お互い、とんと後ろへ跳ねて距離を取るが、次の瞬間には床を蹴って、また身体を密着させ、剣をぶつけ合っていた。
赤い魔道着を着た、赤毛髪の、幼い顔立ちをした少女、令堂和咲である。
体験訓練、かつ戦力データを取るために、リヒトの魔法使いと試合をしているところだ。
膠着状態にも見えるこの戦いであるが、実は既に、勝負はついていた。
飛び掛かろうとする水色の魔法使いが、なにやら異変を感じて、顔を煙らせた瞬間、その喉元にアサキの剣の切っ先が、ぴたりと当てられていた。
非詠唱魔法を使って、練り上げた気を空間のいたるところに固定させたアサキは、仕掛けたポイントの一つに相手が踏み入って、わずか動きが悪くなったところを、迷いなく詰め寄り、難なく仕留めたのだ。
「参りました」
水色の魔法使いは、苦笑を浮かべつつ剣を下げ、次いで頭を下げた。
「おっしゃ、二戦二勝!」
試合を壁際で見ていた青い魔道着の魔法使い、昭刃和美が、嬉しそうに右腕を突き上げた。
先にカズミが、別の魔法使いと戦っており、勝利しているのだ。
「わたしはただ、運がよかっただけだよ」
どこまでも謙遜するアサキであるが、カズミが勝利のハイタッチを求めたため、仕方なく照れながら応じた。
「お疲れ様でした。それじゃあ、外しますね」
下にはジーンズなど、ラフに白衣を着こなしている眼鏡の男性が、二人、アサキの前と後ろに立って、身体に取り付けてある小型の計測器を、慣れた手付きで外していく。
「本当に、手も足も出ませんでした」
水色の魔法使いが、また頭を下げつつ手を出して、アサキへと握手を求めてきた。
恥ずかしく照れくさかったが、このような態度を取られて無下にも出来ず、アサキも手を伸ばして応じた。
「こちらこそ、よい経験になりました」
「さすが、ザーヴェラーを一人で倒しただけあって、とても強かったです」
彼女はそういうと微笑んだ。
「いや、それは、そんな……」
初めて会った人に褒められて、返答に困ってしまう。
しかし、ザーヴェラーを倒したとか、ここでも出るのか、その話。
やめて欲しい。
あれは本当に、ただ運がよかっただけなのだから。
あの時から自分も、少しくらいは成長しているだろうけど。
でも、元々が酷かっただけで。
それまでのみんなの頑張りと、運とで、なんとか倒せただけなんだから。
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