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馬魔
第四章

[8]前話
「あやかし退治でもな」
「そうするのですな」
「そういうことじゃ。ではお館様にことの次第を申し上げるぞ」
 源四郎は供の者に刀を収めて言った、そしてだった。
 晴信にあやかしを退治したことを告げると晴信はこう言った。
「先に寺社を参ってな」
「神仏のご加護を得たので」
「そこにお主の武芸と知恵もあり」
「それで、ですか」
「あやかしを倒せた、お主の武芸と知恵にじゃ」
 この二つにというのだ。
「神仏のご加護があればと思ったが」
「実際にですか」
「出来たな、よかったわ」
「有り難きお言葉」
「褒美は楽しみにしておれ、それでじゃ」
 晴信はさらに話した。
「あのあやかしのことを二郎に調べさせたが」
「あれは馬魔という」
 その信繁が源四郎に話した。
「まさに馬を殺すあやかしでな」
「馬魔というだけあって」
「厄介なあやかしじゃ」
「そうした名前でしたか」
「玉虫色の馬が馬の上に脚を乗せて絡みつけて動けぬ様にしてな」 
 そうしてというのだ。
「馬に乗っている女が笑った時に馬魔はいなくなるが」
「それでもですか」
「脚を乗せられた馬はその後右に数回回って倒れて死ぬという」
「そうでしたか」
「だからお主の様にあやかしと見抜いてすぐに退治してじゃ」
「よかったですか」
「左様、あやかしでも敵の軍勢も何かする前にな」
 その前にというのだ。
「その動きや正体を見抜いてな」
「攻めることですな」
「お主は正しかった、やはりお主は見事な者じゃ」
「そう言って頂けますか」
「お主の様な者こそが当家の宝じゃ」
「二郎の言う通りじゃ」
 晴信も笑って言ってきた。
「お主の様な者こそ当家の宝、これからも頼むぞ」
「ご期待に添えまする」
「うむ、それではな」
 晴信は源四郎の笑みの返事に彼も笑って応えた、そうして彼にこれ以上はないまでの褒美を与えた。
 飯富源四郎後に武田家臣の家の中で名門とされる山県家の主となり山県昌景と名乗る様になった彼の若い頃の話である、若き頃より武勇と知略がありそれによって功を挙げていた彼の逸話の一つである。その働きは戦だけでなく妖怪とのことでも見事であった、これこそまさに真の武士ということであろうか。


馬魔   完


                 2020・10・18
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