第五章
[8]前話
「いや、まさかね」
「ああした子と一緒にいるなんてね」
「それで幸せを貰っていてね」
「それでお金も儲かるなんて」
「そうした理由だったのね」
「そうなのね」
「まあね」
ここで英子は言った。
「幸せをもたらしてくれるのは何か忘れて」
「汚いから追い出すのはね」
奈々も言った。
「それだけで間違いね」
「そんなことするなら、私が言ったことだけれど」
透は老婆の部屋で言ったことを思い出した。
「幸せも逃げていくわね」
「そうよね」
「そうした人からはね」
「自然とそうなるわね」
こう話した、そして。
英子は二人にあらためて言った。
「お婆さんはそうした人じゃない」
「だから幸せで」
「お金も入って来るのね」
「そういうことね、恩を忘れる様な人は」
それこそというのだ。
「幸せにはなれないわね」
「何かをもたらしてくれる」
「そのことに感謝しないとね」
「幸せにはなれないわね」
「最初からね」
「そういうことね、お邪魔してよかったわ」
英子は今度はしみじみとした口調で述べた。
「本当に」
「いいことわかったわね」
「お金儲けのこと以上にね」
「本当にわかったわ」
「今日お邪魔してね」
「ええ、幸せになる人は恩義を忘れない」
英子は実際に言葉に出した。
「そういうことね」
「そして汚いからと言って邪険にしない」
「そうしたら奇麗にすればいい」
「そういうことね」
「それだけのことね」
「そうね、身体が汚いよりも心が汚い」
こうも言った。
「そのことが問題ね」
「そういうことね」
「いいことがわかったわ」
奈々も透も頷いた、三人はこの日のことは絶対に忘れまいと誓いながら帰った。そして実際に忘れることなく一生を過ごした。
大阪の女郎蜘蛛 完
2021・5・30
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