第三章
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「えっ、難波のあのお好み焼き屋さんのオーナーなんですか」
「上本町のタワーマンションの」
「住吉のマンションも持っていて」
「梅田の貸しビルも此花の倉庫ですか」
「それは凄いですね」
「そうなの、経営は主人がしていて」
老婆の夫がというのだ。
「私は何もしてないの。息子や孫も頑張ってくれているし」
「お店やマンションやビルのことは」
「そうなんですか」
「お婆さんはですか」
「何もしないわ」
こう三人に言うのだった。
「私はね」
「ですが」
英子はおずおずと老婆に問うた、出してもらった紅茶もケーキも上等のものであるのが口にしてわかった。
「何でこのマンションに」
「実はここじゃないと嫌ってね」
「嫌っていいますと」
「この子が言うから」
「そうなんだ」
ここで出て来たのは。
小さな古い着物を着た八歳位の男の子だった、江戸時代の髪型で鼻水を垂らしている。その子が来て言ってきた。
「おいらここじゃないと嫌なんだ」
「この子が前のお家から引っ越す時にね」
「このお部屋がいいと思ったから」
「ここにずっと住んでるのよ」
「あの、その子誰ですか?」
奈々はその江戸時代の子としか思えない子供を見て老婆に問うた。
「物凄く時代が違う感じがしますけれど」
「江戸時代の子供ですよね」
透が見てもだった、このことは。
「どう見ても」
「この子は竜宮童子っていうのよ」
老婆はその子供を見ていぶかしむ三人に答えた。
「幸せをもたらしてくれる妖怪なの」
「へえ、妖怪だったんですか」
「うちの学園そのお話多いですけれど」
「その子ははじめて聞きました」
「大阪球場で杉浦忠さんが出ている試合を観てね」
老婆は三人ににこにことして話した。
「私が主人と結婚してすぐだったわね」
「杉浦さんって」
「あの南海今のソフトバンクのエースだった人ですね」
「シリーズ四連投四連勝の」
「あの人がデビューした年で」
昭和三十三年でというのだ。
「その帰りに球場の出口で会って」
「それで、ですか」
「それからですか」
「その子と一緒ですか」
三人はその妖怪を見つつ話した。
「昭和三十三年から」
「もうかなり昔ですね」
「そうなりますと」
「その時からうちはどんどんいいことがあって」
そしてというのだ。
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