第一章
[2]次話
スラッガーが加入して
根室寿はこの時上機嫌だった、それで妹の千佳に対して朝食の時に新聞のスポーツ欄を見ながら話した。
「阪神昨日も勝ったな」
「それ夜も言ったわよね」
妹は兄に憮然として返した。
「今日も勝ったって」
「ああ、凄かったな」
「佐藤さんよね」
千佳はこの選手の名前を出した。
「打って打って打ちまくって」
「ルーキーでな」
「それで打線が強くなって」
「これまで打線がネックだったのに」
阪神の伝統の一つである。
「それが補強されてだよ」
「勝てる様になったわね」
「いや、よかった」
心からこの言葉を出した。
「お陰で阪神独走だよ」
「それはよかったわね」
兄にジト目でやや憮然として返した。
「応援はしてあげるわ」
「そうか、悪いな」
「精々頑張ってね」
「精々か」
「カープじゃないから」
贔屓のチームのことではないからだというのだ。
「もうね」
「どうでもいいんだな」
「全く、三連覇してから」
それからとだ、千佳は朝食のご飯に納豆をかけて食べながら言った。見れば寿もそうして食べている。
「ぱっとしないわね、カープ」
「またよくなるだろ」
「そうなって欲しいわ、まあ巨人じゃないから」
強いチームがというのだ。
「だからいいけれどね」
「やっぱり巨人は駄目だな」
「お兄ちゃんもでしょ」
「当然だろ、巨人は悪だぞ」
紛れもないそれだというのだ。
「巨人こそ最下位にならないとな」
「清原でも監督にしてね」
「それも終身のな」
「そうなって欲しいわね」
「全くだ、けれどカープ今五位だろ」
「そうよ、それで阪神トップよね」
「このままいきたいな」
「そうよね、全く今年は」
ぼやきつつ言った、今度は。
「苦しいわ」
「せめて二位になれよ」
「一位になりたいわ」
「悪いな、阪神だ」
一位はというのだ。
「だからそれはないな」
「本当に打つからね、佐藤さん」
「ああ、阪神の救世主だよ」
寿はにこにことして言った、そして。
朝食を大量に食べた、それからだった。
登校したが学校でも友人達に満面の笑顔で語った。
「いやあ、今日も勝ったよ阪神」
「絶対に言うと思ってたよ」
「阪神勝ったってな」
「今絶好調だしな」
「佐藤さんが入ってな」
「若手が育って来てる中でな」
それに加えてというのだ。
「やっぱりな」
「佐藤さんだよな」
「あの人打つよな」
「凄い打球だよな」
「もう完全にスラッガーだよな」
「ルーキーだけれどな」
「あの人がいてな」
それでというのだ。
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