第二章
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どんどんぬかるみの中に沈んでいってだった、もう腹まで入っていた。
グラハムはその彼女の傍にいた、彼女も腰まで入っていたがそれはもう構うことはなかった。そして。
娘はすぐに馬に乗ったまま踵を返して家に戻った、そして父のチャーリー大柄で黒い髭を生やした青い目で金髪の彼に事情を話した、すると彼はこう言った。
「馬は重い、人間の力で引き出せない」
「じゃあどうするの?」
「救助隊に連絡をして」
そしてというのだ。
「重機を持って来てもらうぞ」
「重機?」
「あれの力なら馬でも何とかなる」
大きくて重いこの生きものでもというのだ。
「その力で引っ張って」
「アストロをぬかるみから引き出すの」
「まだ現場を見ていないが詳しい事情はわからないが」
それでもというのだ。
「泥みたいなところに腹まで入っているんだな」
「ええ、そうなっているわ」
「だったらだ」
その状況ならというのだ。
「それしかない」
「重機でなのね」
「引っ張り出す」
こう言ってだった。
父は救助隊に連絡した、そして娘と共に現場に向かったが。
妻は腰までぬかるみの中に入りながらアストロの傍にいて彼に寄り添っていた。その彼女に言った。
「救助隊に重機を持って来る様に頼んだ」
「だからなのね」
「もう大丈夫だ」
「大丈夫かしら、潮が」
妻は夫に海の方を見て心配そうに言った。
「あと少しでね」
「満ちて来るか」
「それまでに間に合うかしら」
「もうすぐ来てくれるからな」
「大丈夫なのね」
「安心するんだ」
こう言って妻を励ました。
「いいな」
「それじゃあね」
「アストロは助かる」
「じゃあ私はその間ね」
「アストロに寄り添うんだな」
「物凄く怯えているから」
「ヒヒン・・・・・・」
見ればそうなっていた、アストロは怯えきっていて震えていた、思わぬ出来事でこれからどうなるかと思ってだ。
だからニコールはずっと彼の傍にいた、そしてだった。
怯えて震えている彼に寄り添って触れて励ましの言葉をかけ続けた、そのまま時間が過ぎていったが。
救助隊が来た、ヘリも来ていて。
しかも重機、トラクターまで来ていた。救助隊の面々はすぐにアストロにロープを付けてトラクターにもだった。
ロープを付けて引っ張った、その力でだった。
彼をぬかるみから出した、こうして彼は海泥に塗れながらも何とか助かった。三時間かけてそうなったが。
ニコールはほっとして言った。
「よかったわ、どうなるかと思ったけれど」
「話を聞いてすぐに思った」
夫も言った、助かってほっとしている愛馬を見ながら。
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