"二重のキズナ"
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れは確かに可奈美自身の記憶より再現されたものだが、彼女の暖かさは、本物と寸分たがわぬものだった。
「ありがとうね。偽物でも。私と立ち合いさせてくれてありがとう。姫和ちゃんの力を見せてくれてありがとう。私を……」
ぎゅっと抱きしめる力が強くなる。
「可奈美って呼んでくれて、ありがとう」
「……相変わらず……」
「ん?」
やがて、姫和の姿は、徐々に薄くなっていった。全身が粒子のようにボロボロになっていく。
「お前の声は……よく響く……」
「あ、待って」
可奈美は、消えゆく姫和を呼び止める。ポケットから、コンビニ袋を取り出し、その中から今朝の購入物を取り出す。
「姫和ちゃんだったら、これ……好きでしょ?」
それは、チョコミント菓子だった。箱に梱包されたそれを、姫和は慣れた手つきで開封し、一つ。口に運ぶ。
「……ふっ。お前も食え」
「うん」
姫和に促され、可奈美も一つ口に入れた。
「うん。……やっぱり、歯磨き粉の味だ」
「貴様……また言うか」
「だって……ミント味が利きすぎて……涙が出てくるんだもん……」
可奈美はそう言って、目元を拭う。
「全くお前は……だが」
「何?」
「その先は、本物の私に言ってくれ……」
その言葉とともに、姫和の姿は、粒子となって霧散していった。
「……」
虚空になったムーの中、可奈美はもう一つ、菓子を頬張る。
「……姫和ちゃん、やっぱり、チョコミントって変な味だよ……」
可奈美の体が、少しずつ震えていった。
「歯磨き粉の、強い味がする……」
味のミント成分の強さに、涙があふれていた。
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