"二重のキズナ"
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た。
数瞬の沈黙の後、姫和が先に動いた。
右からの打ち込みは抑え、左下からの攻撃で足にダメージ。
歯を食いしばりながら、可奈美は反撃する。だが、雷の速度は可奈美の刀使としてのスピードをも上回り、捉えることなどできない。
「悪いな可奈美。これで終わりだ」
その声は、すぐ背後からだった。ビクッと肩を震わせて振り向いた時、姫和はすでに空高く飛び上がっていた。
より雷が激しく唸る。耳をつんざくその音とともに、姫和は雷の剣を振り下ろした。
その小烏丸はまさに。
雷神の剣。
「はあっ!」
可奈美を貫き、ムーの地を貫く小烏丸。地面から放射状に青白い光が広がっていく。
「うわああああっ!」
可奈美は悲鳴を上げ、吹き飛ばされる。雷の放射は、ムーの遺跡の形状___丁度その場は十字路のような形になっていたため、十字に広がっていく。
ビリビリと残光が残る中、姫和は可奈美に背を向けていた。
「終わりだな。可奈美」
うつ伏せで倒れる可奈美は、姫和を見上げる。こちらに背中を向けたままの彼女は、そのまま続けた。
「お前を連れて行きたくはなかったが……命令には逆らえないようだ。お前を……バングレイのもとへ連れて行く」
「……バングレイ……!」
その名前に、可奈美は体を突き動かす。
「姫和ちゃん、やっぱりバングレイに……!」
「……何を言っている。私は、お前の記憶にある通りの、十条姫和だ」
「……違う……」
よろよろに立ち上がることに力を注いでいるのに、可奈美の口はいつの間にかそんな言葉を紡いでいた。
「はあっ!」
気迫の入った一撃。ほとんどダメージのない姫和は簡単に弾き返すが、可奈美は足を踏ん張らせ、その場にとどまった。
「この一撃は……軽い!」
もう一度、千鳥が叫ぶ。
続く攻撃は、姫和は受け流すことができなかった。打ち合いでは破れ、数歩後ずさる。
「何……!?」
「姫和ちゃんの剣は……本物の小烏丸は……もっと……!」
再び千鳥が嘶く。今度は、もっと強く。明確に。
「重い!」
それは、姫和を弾き、可奈美から引き離した。
「何!?」
思わぬ反撃だったであろう、姫和は驚きをもってその結果を受け入れた。
可奈美は大きく息を吸い、吐き出す。
「うん。強いよ。多分、本物の姫和ちゃんより」
大きく呼吸を繰り返しながら、可奈美は姫和を見つめる。
「速いし強いし。電撃なんて、なにより違うもん。でも……」
頭で考えるよりも先に、それは口から飛び出していた。
「姫和ちゃんの剣は、重かった。背負ってた。秘めていた! それがない! だから……だから私は、あなたには付いていけないよ!」
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