筋肉襲来
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丈夫! 行くよ、千鳥! ……千鳥?」
いつものように抜刀しようと腰に持っていた千鳥を掴む。だが。
ない。
「あれ!?」
「え、衛藤さん?」
さっき、紗夜を御姫様抱っこした。
両手を使った。その時、彼女を支えることに専念するために両手をパーにした。
つまり。
千鳥はアブラミーの足元に転がっていた。
「あ」
思わず千鳥を手放したことに、可奈美は目が点になった。
「え、衛藤……さん?」
「ごめん、紗夜さん」
可奈美は機械音が鳴るような遅いスピードで振り向く。
「私の武器、落としちゃった」
「……は?」
紗夜が口をぽかんと開けていた。
そうこうしているうちに、アブラミーが一気に距離を詰めてきた。
「これくらいの相手ぇ? このアブラミー様になめた口利くとどうなるか、思い知らせてやるぜ!」
「!」
すでに目と鼻の先に迫る拳。
可奈美は紗夜を抱え、その場から飛び退いた。背中を向け、回避したと同時に、床が粉々になる音が追ってくる。
「っ……!」
浮かび上がる破片を遠い気持ちで眺めながら、可奈美は急ぐ。
「待てええええい!」
巨漢は、走るのももどかしく、ジャンプで移動している。一回一回のジャンプは、可奈美の移動をもしのぐ。狭いムーの壁を伝って先回りしたアブラミーは、即座にその丸木のような腕を振り下ろした。
「っ!」
可奈美は急いで紗夜を下ろし、アブラミーの拳を蹴る。真っすぐ伸びていた拳は軌道を大きくずらされ、ムーの遺跡へ突き刺さった。
「な、なに!?」
「逃げて!」
可奈美は紗夜を押し付けながら叫ぶ。
紗夜は躊躇いながら、やがて可奈美に背を向けて反対方向へ去っていった。
「よし、今のうちに……」
可奈美は千鳥を回収しようとする。だが、その前に巨大な瓦礫が落下した。
「うわわっ!」
「待てぃ!」
アブラミーの仕業だった。彼はさらに、丸腰の可奈美へその筋肉で飛び掛かる。
無防備な可奈美には、すでに防御の手はない。
身構え、痛みに備えようとしたその時。
「随分諦めるのも速くなったな。可奈美」
「……え?」
いつの間に。
さらさらと伸びた黒い髪。その下にある、平城学館の深緑の制服。黒い鞘に収められたのは、可奈美の千鳥と深い縁を持つ御刀、小烏丸。真っすぐとした鋭い眼差し。女性としては平坦なボディライン。
その名前を忘れたことなど、一瞬たりともない。
「姫和ちゃん……」
「瞬閃!」
可奈美の記憶より再現された、可奈美が最も救いたい人物、十条姫和。彼女の振り抜いた小烏丸は、雷を帯びながらアブラミーへ放たれる。
「
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