月様+詠さん×皆=董卓軍の誓い
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……グダグダ言ってんじゃないわよ、アンタ」
月様の目の前では、緑色の髪を三つ編みにした眼鏡少女――――詠さんが右手を振り切った状態で月様を睨みつけていた。そこにはいつも彼女に向けるような慈愛の感情はなく、ただ、怒りのみが棲みついている。
あまりにも詠さんらしくない行動に、俺は思わず彼女に詰め寄っていた。
「ちょっ……詠さん!? いきなり何を――――」
「黙りなさい、雹霞。今ボクは真剣に怒っているのよ」
「っ……」
いつになく緊迫した空気に、俺は無言で一歩下がった。無言のプレッシャー。決して抗うことのできない何かが、詠さんの身を纏っていた。
詠さんは引っ叩かれて呆けたままの月様の目を見据えると、溜りに溜まった鬱憤をぶちまけた。
「いっつもいっつもペコペコペコペコして……アンタはこの街の領主なのよ!? 一番偉いの! この街にいる誰よりも、上の立場にあるのよ! それなのに、なんでそんなに謝ってばかりなワケ!?」
「ごっ、ごめんなさっ……」
「だから謝るなって言ってるでしょうが!」
「ひっ」
バン! と思いっきり円卓を叩いて月様を威嚇する詠さん。何を考えているか知らないが、いくらなんでもやりすぎではないだろうか。
そろそろ止めに入らないと。そう思い、再び動き出そうとした俺だったが……次は姐さんに腕を掴まれ、制止せざるを得なくなる。
姐さんは厳しい表情で俺を見つめていた。
「……アカンで、雹霞。賈駆ちんにも、考えがあるんや。月ちんをもっと『強く』するために、大切ななにかを考えているんや」
「大切な、なにか……?」
「せや。やから、止めたらアカン。ウチらは黙って見守っといた方がえぇ」
「……わかりました」
なぜか、逆らってはいけないような気がして、俺はそのまま口を閉じた。普段の董卓軍にはない空気が、広間を支配する。
詠さんは続けた。
「謝るなっ……! アンタが堂々としてなきゃ、部下に示しがつかないでしょうが……!」
「え、詠ちゃん……」
「いつだって謝って、謝って、謝って……死罪寸前の咎人じゃないんだから、そんなに謝らないでよ……ボクは月に強くあってほしいの。優しくてもいい。力が弱くてもいい。でも、心だけは弱くならないでちょうだい……!」
ポロ、と詠さんの目から涙がこぼれた。溢れる思いが堰を切り、とめどなく溢れだしている。
いつもはあんなに憮然としている詠さんが、こんなに泣くなんて……。非現実的な光景に、俺だけではなく全員が息を呑んでいた。
詠さんが泣いているのを見て、月さんは何かを決意したような表情になると彼女の背中を優しく擦る。
「……ごめんね、詠ちゃん」
「……謝らないでよ、月」
「うん。わかったよ。私はもう、無駄なことで謝らない。もっと強くな
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