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とある3年4組の卑怯者
17 恋人(ささやまかずこ)
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は歯医者で学校に遅れるわ」
「そう、でもよかったわ」
 リリィと城ヶ崎はホッとして笹山と話をして楽しんだ。しかし、藤木は黙ったままだった。
(笹山さんに何て言えばいいんだろう・・・)
 やがて、リリィに城ヶ崎は帰ることになった。
「それじゃリリィさん、帰ろうか。藤木は?」
「僕は笹山さんと話したいことがあるんだ。先に帰っててくれるかい?」
「分かったわ、さようなら」
 リリィと城ヶ崎はその場を去った。藤木と笹山の二人きりとなった。
「藤木君、話したいことって・・・?」
 藤木は永沢が言ったことを思い出していた。なぜリリィが好きでありながら笹山を助けたのか、そしてどちらをとるのかけじめをつけるべきであることを。
「笹山さん、僕を庇ってくれてありがとう。でもケガしたのは僕にも責任を感じているよ」
「藤木君、もういいのよ、藤木君は悪くないんだし、私を助けてくれたんだから、それに心配してくれてありがとう」
「でも笹山さんは僕がリリィを好きだというのに、何かおかしく感じなかったかい?」
「え、そんなことは・・・。そうね、ケーキの消しゴムを貰った時に、リリィさんだけじゃなくてなぜ私にもプレゼントをくれたということにはどうしてと思ったけど」
「そうだったんだ、そのことはさくらから聞いたけど。そうなると、今日僕が君を庇ったのもなんか怪しむんじゃないかと思ってね・・・」
「そんな、でも藤木君はリリィさんが好きなんでしょ?それでいいじゃない」
 藤木は思いきって打ち明けようと思った。
「確かに、僕はリリィも好きだ。でも、リリィと会う前から他に好きな人がいるんだ・・・」
「え?」
 笹山の顔が笑顔から唖然とした表情に変化した。
「その人は一年生の時から好きだったんだ。卑怯と呼ばれる僕にもいつも優しくしてくれて、お返しにその人に何かしようと消しゴムをあげたり今日も困っているところを助けようとしたんだ。でも好きだと言えばその人も好きになるわけじゃないってわかってるんだ。もし知ったらうっとおしく思って僕を嫌うんじゃないかと思って、だから想いを伝えられないんだ・・・」
 藤木は泣きそうになっていた。
「それにその人は僕みたいなドジで卑怯で、スケートしか取り柄がないダメな奴よりも、花輪クンみたいなカッコいい男子や、大野君や杉山君みたいな頼りがいがある男子のほうがお似合いだと思ってしまうんだ・・・。そんなことを怖がって伝えられない上に好きな人がもう一人いてどっちか決められないなんて本当に僕は・・・、僕は卑怯者だよね・・・。言いたかったのはそれだけだよ、それじゃさよなら!」
 藤木は恥ずかしくなり、泣きながら去っていった。
「あ、待って!」
 笹山は呼び止めたが、時は遅く、そのまま藤木は帰ってしまった。
「藤木君・・・。そうだったんだ・・・
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