第二章
[8]前話
「そうしているんだ」
「そうなんだな」
「何でもそのコウノトリは南アフリカのケープタウンから来ているらしい」
「おい、このクロアチアからどれだけ離れてるんだ」
南アフリカと聞いてだ、釣り仲間は驚いて言った。
「相当だろ」
「そうだよな、けれど毎年な」
「わざわざ来てるんだな」
「嫁さんのところにな」
「凄いな、戦争もあったのにな」
「それでもな」
「コウノトリの愛情も馬鹿に出来ないな」
こう釣り仲間に言った。
「そうだな」
「実際にそう思うぜ」
「だから俺もな」
「毎日釣ってか」
「自分の食う分はあるんだ」
そちらは困っていないというのだ。
「けれど連中の為にな」
「魚釣ってるんだな」
「釣れなかったら店で買ってるさ」
「余計に凄いな、そうしてか」
「ああ、あいつ等の手助けをしてるさ。つがいの雄は子供達に飛ぶことを教えてな」
「奥さんも大事にしてるんだな」
「毎年な、それじゃあ明日もな」
スティエバンは仲間に笑って話した。
「釣るな」
「あいつ等の為にか」
「毎年遠いところから来て幸せにしているあいつ等の為にな」
「そうか、じゃあ頑張れよ」
「ああ、もう歳だがもう少し頑張るさ」
仲間に笑ったまま答えた、そしてだった。
スティエバンは独立した三人の息子達が家族を連れて家に帰って来ると彼等にもコウノトリの家族を紹介して一緒に仲良くした、そして。
三人の息子達と彼等の家族と一緒に家の庭で記念写真を撮る時にコウノトリの一家に声をかけた。
「お前達も一緒にどうだ?」
「ガァッ」
コウノトリ達も応えてだった。
老人を囲んで一緒に写真を撮った、彼等はもう完全に彼の家族になっていた。
コウノトリの末裔 完
2021・5・15
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