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9月の中頃、少し涼しくなってきた日曜日。絢のお母さんが、どうしても伺いたいというので10時頃やってきた。絢は居ない。絢の成績のことでお礼がしたいということらしい。僕にもできれば居てほしいということらしい。
「主人がどうしてもお礼にお伺いするようにと言っておりまして、日曜にお邪魔して申し訳ございません。主人は、最初のうちは娘が男の子のお宅にお伺いすることに反対してたんです」
「女の子は学校の成績なんてどうでも良い、躾と愛嬌さえ良ければいいんだと固い考え方でして、だけど、絢の通信簿を見て喜んでおりましたわ。そして、今度はクラスで9番目になったと聞いて、とてもはしゃいでしまって、会社の連中にも言って回ったりして。是非とも水島さんのところにお礼に行ってこいと言われましたの。本当に基君には感謝しております」と言って、僕とお母さんに向かって頭を下げていた。
そして、持ってきたお菓子の箱を差し出した。昔の宿場町通りにある江戸時代から続いているお菓子屋「旭屋」のものだ。
「ここの三笠 焼きたてがとてもおいしいので、焼きたてを買ってまいりしたので冷めないうちにどうぞ」と勧めてきた。
お母さんはお茶を新しいものに換えて、
「お言葉に甘えます」と言って手をだして、
僕にも「いただきなさいょ」と。
確かにうまい、まだ香ばしさが残っていた。
「あの子はあんまり積極性が無くて、明るい方でもないんです。いつも独りのことが多くって。だけどこちらのお家に通うようになって、本当に家の中でも明るくなって、前は学校での出来事なんか全然話さなかったのに、最近は本当に何でも楽しそうに話しかけてくるんですの 基君には家にも来てもらって勉強してもらえば良いのですが、うちの近くは古い家が多くて、うちは女の子ですし、男の子が出入りなんかすると、すぐにうわさをたてられたりするので、申し訳ないのですが呼べないんです。古いんでしょうけど本当にごめんなさい」と謝っていたが、
うちのお母さんは「いいえぇー、そんなこと気になされないで、うちは女の子が来るだけで明るくなって楽しみです、それにお宅の絢チャンは、お昼ご飯のあともお皿洗いを手伝ってくれたり、礼儀正しいし、本当にいいお嬢さんですワ。基にも刺激になって本当に良かったと思っているんです」とか言い出したが、
僕は話が長くなってきたので自分の部屋にこもってしまったのだ。
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