第伍話「あの日の炎」
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てたもんな。
すると、古達ちゃんは俺の方を真っ直ぐ見つめて聞いてきた。
「興梠は、どうして消防官になったんだ?」
「ん?俺は……」
俺が消防官になった理由。
それは、あの日から明確に俺の心で燃え続けている炎そのもの。
「会いたい人が居るんだ」
「会いたい人?」
「俺の命の恩人だよ」
首を傾げる古達ちゃん。
俺はあの頃を思い出しながら、言葉を紡ぐ。
「小さい頃、俺の爺ちゃんは学校の先生でさ。研究であんまり婆ちゃん家に戻ってこないから、よく学校まで遊びに行ってたんだ」
250年前の大災害と、大災害で失われた大昔の文化について研究していた爺ちゃん。
爺ちゃんから、失われた昔の文化の話を聞くのが大好きだった俺は、飼い犬のリンを連れて、よく爺ちゃんの研究室へ遊びに行っていた。
「でも、あの日学校が燃えて……不幸な事に、俺は閉じ込められたんだ」
後で聞いた話によると、出火の原因は焔ビトだった。
そして、焔ビトになったのは……爺ちゃんだった。
「取り残された俺は、炎と煙の中でただ死ぬのを待つしかなかった。そんな時……リンと、そしてあの人が俺を救ってくれたんだ」
消防隊員に俺の居場所を知らせようと、リンは炎の中を走り抜け、そして死んだ。
でも、リンのお陰で消防隊員は俺を見つけ、助ける事が出来たのだそうだ。
『もう大丈夫だ。絶対助けてやるからな』
そう言われ、優しく頭を撫でられた感触を、今でも鮮明に覚えている。
「だから、俺はあの人にもう一度会いたい。もう一度会って、お礼が言いたい。そして、リンとあの人に救われたこの命で、もっと多くの人を救いたい」
「それが……興梠が消防官になった理由?」
「ああ。それが俺の目標だ」
「そっか……」
古達ちゃんの方に視線を戻すと、何やら沈んだ顔になっていた。
「あ……ごめん。スイーツ食べてる時に、こんな重たい話して……」
「いや、そうじゃなくてさ……その……ちょっと見直した」
「見直した?」
「そう。私なんかよりずっと、色々考えてるんだなってさ」
「そんな事ないよ。古達ちゃんもいつか、自分の目標が見つかるはずだって」
「そうかなぁ……」
自信なさげに溜息を吐く古達ちゃん。
「きっかけは何となくでも、その後の事はいくらでも後付け出来るさ。配属されてまだ半年も経ってないんだし、気楽に行こうよ」
「興梠……」
気づけばあれだけあったスイーツは、殆ど消えている。
お互い、喋っている間に意外と食べていたらしい。
「ケーキのおかわり、取ってくるよ。何がいい?」
「じゃあ……クリームタルト」
「りょーかい」
こう思ってるのは俺だけかもしれないけど……古達ちゃんとの距離が、前より少しだけ
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