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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
【著名な戦闘】ヴァンフリート4=2防衛戦
【著名な戦闘】ヴァンフリート4=2防衛戦(4)〜構成邦軍は集う〜
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向けられた先の貴賤を気に掛けることがないことは内務長官もよく知っております」
 セレブレッゼはわかった、と手を振り、座った。
「失礼した、中佐。もちろんそれでなにがということは――」
 きまり悪そうな司令官を遮るように副司令官、フォルベック少将が立ち上がる。

「その通りだ、便宜を図ることはない。なにしろ」
 フォルベック副司令官はニヤリと笑って皆を見まわした。
「ティアマトのタロット議長閣下から本基地に大量の食糧が寄付されている。幸運な将兵諸君は少なくとも餓死と不味い飯が原因で死ぬことはない事だけは確証しよう」
 ワイワイと声を上げる将校達――信念以上に食事は士気をもたらすと知りぬいている者達である――を見てフォルベックのみならずセレブレッゼも少しだけ微笑し、口元をハンカチでぬぐった。
 フォルベックが手を挙げるとそれがぴたりとやんだ。
「そして――矢玉が尽きて、ということも。だが成すべきことはいくらでもある。
各員にはそれぞれ準備作業を割り振っておく、万全の態勢を整えてもらおう」




 指揮官集合を終えた基地司令部の面々は司令官室に戻る。
「――愚かしい話だ」
 セレブレッゼは数名の幕僚と副司令官だけになると吐き捨てた。
「は?」

「愚かしい話だと言っている!同盟軍がここに目をつけたのはここが主戦場ではないからだ!
情報が漏れて敵の侵攻を受けたのであれば!
もはやこの不便極まりない土地に会戦規模の戦力を養える基地を築いた意味はもはやない!早々に撤退すれば良いのだ!!
ロボスとシトレは何を考えている!」

 さてどうかな、とバドウ少佐は思考を巡らせる。
 強力な陸戦戦力と亡命者というネットワークを築き、パランティアとも近いアルレスハイムと並び、ヴァンフリートは星域内における情報通信すら阻害する電磁波やらの宇宙嵐と艦隊としての行動も困難な小惑星群――イゼルローン回廊から最も近い星域として並ぶティアマト・アルレスハイム・ヴァンフリートの三つの星系で比べると安定して豊かな土地を持っているティアマトから交通の要衝、アスターテを通り交戦星域を荒らすのが【私掠艦隊】や正規軍の主要行軍ルートだ。
 セレブレッゼの”常識的”分析は的外れではない。
 だがそれはヴァンフリートは帝国にとっては忌々しい僻地、喉元に刺さる小骨である事を示す。コルネリアスの【大親征】では彼の“元帥団”の一人、後方の維持を統括していた一人の元帥が貴族反乱とそれによる征服事業の失敗を知り、保身のために仕掛けた最終攻勢であえなく戦死した星域である。
 つまるところ、ここは”主戦場ではない”のではない。”優先度が低い主戦場”なのだ。
 
「絶対はありません」
 フォルベック少将は肩をすくめる。
「アルレスハイムが2年前に侵攻を
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