暁 〜小説投稿サイト〜
天才少女と元プロのおじさん
夏大会6回戦 柳大川越
36話 私がちっちゃ過ぎて気付かなかったとでも言いたいのかなー?
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「いやー、やっぱりいつもの席は落ち着くよねー。自分ちみたいな安心感があるよー」
「また正美ちゃんはそんな事言って??????」

 スタメンから外れての正美の発言に珠姫は呆れた様子を見せる。

 本日のスターティングラインナップは、1.中村希(一)、2.藤田菫(二)、3.山崎珠姫(捕)、4.岡田怜(中)、5.藤原理沙(三)、6.川崎稜(遊)、7.大村白菊(右)、8.川口息吹(左)、9.武田詠深(投)。打撃不振の稜が打順を一つ下げてはいるが、ほぼ新越谷の基本オーダーである。温存していた詠深が先発することにより、正美は二試合振りのベンチスタートとなった。

「まあまあ。私みたいな器用貧乏はここがちょうど良いんだって」
「貧乏ってレベルじゃないでしょ」
「あはっ。そろそろランナーコーチに行くとしますかねー。背番号1の凄い奴が相手〜♪」

 正美はこの試合から駆け付けてくれたブラスバンドの演奏に合わせて歌詞を口ずさみながら三塁コーチャーズボックスへと向かった。

 コーチャーボックスから朝倉の投球をじっくり観察する。朝倉が白球を投じると、それを受け止めるミットからはけたたましい音が鳴り響いた。熊谷実業の久保田の球も速かったが、朝倉の球は伸びも十分で、埼玉最速と比べても見劣りしない。今、球威を見る限りでは間違いなく全国クラスだった。

――これを打てる様にならないといけないんだ。

 正美が改めて目標を再確認したところで、セットポジションの朝倉と目が合う。彼女は柔らかく微笑むと、再び投球練習へと戻っていった。

――朝倉さん大物だなー??????。

 そんな朝倉に正美は柳大川越次期エースの片鱗を感じるのだった。

 ボールバックされ、審判よりプレイのコールが掛かる。

 先頭の希は朝倉の初球、ストレートをバットで捉えた。打球は朝倉の頭上を駆け抜けセンター前に落ちる。希は一塁を回った所でストップ。そんな希を正美はコーチャーズボックスから見つめていた。

――やっぱ希ちゃんは凄いや。希ちゃんは最初、私に嫉妬するって言ってたけど、私なんかよりも希ちゃんの方がずっとチームに貢献してるよ。
――でもね、私もこのまま終わるつもりはないから。

 そう静かに正美は一人、楽しそうに誓う。

 新越谷は希以降、後続が続かずに怜のセカンドゴロでスリーアウトとなった。






 
 柳大川越の一番はセンターの大島。

 初球、詠深の放った白球は左打席に立つ大島へ迫る。大島は腰を引いて避けるが、白球はストライクゾーンへ食い込んだ。フロントドアのツーシームでB0ーS1。

 二球目も詠深は内角を厳しく攻めるが、大島はこれをカットする。B0ーS2

 三球目はナックルスライダー。外角にすっぽ抜けた様
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