暁 〜小説投稿サイト〜
天才少女と元プロのおじさん
27話 すっごく心強かったよ!
[1/3]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 新越谷 2−3 梁幽館。0 out走者1・3塁のチャンスで迎えるのは本日4番に座る希である。

 中田がセットポジションに入ると、正美は大きくリードをとった。一般的にリードの距離の目安として身長の1.5倍や、手を上げた高さ+1歩と言われているが、現在、正美は自分の身長の二倍近くリードを取っている。

 中田は一塁に牽制した。正美は頭から一塁へ帰塁する。

 正美のリードに気付いた一部の観客がざわついた。

「ちょっとあの娘リードしすぎじゃない?」
「流石に嘗め過ぎだろ」

 今度は一塁への偽投を見せる。正美は再び頭から帰塁した。

 正美のリードにはトリックがある。通常、走者は次の塁へ進む意識と牽制の際に帰塁する意識を両立させているのだが、今の正美は進塁の意識を全て捨て去り、帰塁する事にのみ意識を働かせていた。それにより通常よりも早く牽制に反応できるようになり、大きなリードを可能としている。

 一塁走者の正美は逆転のランナーである。梁幽館にからすると得点圏には絶対に進ませたくない。梁幽館サイドは正美の足の速さや、初戦では1球目から説極的に盗塁しているのもビデオで確認済みである。その上で大きくリードを取られるとどうしても警戒せざるを得ない。

 初級ストレートを外角高めに大きく外した。S0―B1

 このピンチの状況でカウントを悪くしたくない。しかも、次の打者は3打数2安打と好調の怜である。そして、1塁ランナーには走力のある正美。梁幽館バッテリーにとれる選択肢は多くない。

 ランナー二人を牽制しつつ、中田は2球目を投じる。内角への力強い直球。これを希はフルスイングした。バットは白球を真っ芯でとらえると、打球はライトへと上がっていき飛距離をどんどん伸ばしていく。やがて白球はライトの頭を裕に越し、ポールを巻いてスタンドに飛び込んだ。

 グラウンド、ベンチ、スタンドを問わず梁幽館の野球部員が凍り付く中、希はゆっくりとダイヤモンドを一周する。

 ホームベースを踏み、ベンチに戻ってきた正美はみんなとハイタッチを交わした。そして、稜の前にやってくる。

「ナイバッチ!」

 稜は正美とハイタッチして、今度は希を迎える準備をしようとすると下から軽い衝撃に襲われた。衝撃を感じた所を見下ろすと、そこには正美が抱きついている。

「応援ありがとっ。すっごく心強かったよ!」

 そんな正美に、稜は照れ臭そうに笑うのだった。






 最終回の守り。正美はショートの守備に着く。

 マウンドで詠深と珠姫が和やかに話をしている様子が確認できた。公式戦初勝利を前にしても、詠深からは緊張している様子は見られない。

――このメンタルの強さはヨミちゃんの強みだね。

 エースの風格を醸し
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ