第二章
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「それで帰るつもりです」
「今マンションだったわね」
「はい、表向きはまあ」
「私もよ、まあプライベートのことはね」
明星は奈央の隣の席に来て焼酎のロックと焼き鳥を注文してから話した。
「お互いにね」
「言わないことですね」
「マスコミもいるし」
それにというのだ。
「最近はね」
「ネットもですね」
「そっちもあるから」
「気をつけてですね」
「言わないことよ、ツイッターでもね」
「匂わせないことですね」
「一切ね、それでだけれど」
焼き鳥を受け取りつつ話した。
「今読んでるの何?」
「ああ、これですね」
目の前の文庫本実際に呼んでいたそれを見つつ明星に応えた。
「舞姫です」
「森鴎外ね」
「文章が古典ですから」
それでというのだ。
「読んでいるんです」
「そうなの」
「古典っていいですよね」
奈央は笑って話した。
「何かと」
「前から思っていたけれどどうしていいの?」
今度は焼酎を受け取った、そうしてジョッキでビールを飲みながら話す奈央に対して問うた。
「古典が」
「趣味で読んでいることは」
「そう、どうしてなの?」
「恋愛です」
「恋愛?」
「舞姫って恋愛ものですよね」
「ああ、教科書で習ったけれど」
明星はこのことから話した、彼女は読書は趣味ではないので舞姫も読んだことがないのだ。それでよく知らないのだ。
「失恋だけれど」
「主人公結構以上に酷いですが」
「作者のお友達か作者本人かね」
「そのお話らしいですね」
こうしたことが実際に言われている、ドイツから赤子を抱いた女性が森鴎外本名森林太郎のところに来たという話も残っている。
「どうも。ですが」
「恋愛ものだからなの」
「読みました、古典も恋愛もの多いですね」
「そういえば」
明星も言われて気付いた、焼酎を飲みつつ頷いた。
「そうね」
「源氏物語もそうで」
「他のお話もね」
「竹取物語も」
世界最古の物語と呼ばれているこの作品もというのだ。
「そうした見方が出来ますね」
「五人の貴公子も帝も」
「そうですね」
「ええ、かぐや姫もてもてね」
「はい、本当に」
「それでその恋愛劇をなの」
「読んでいて」
そうしてというのだ。
「かぐや姫に憧れて。伊勢物語では」
「そのお話もなの」
「美男子の失恋からはじまりますね」
昔男ありけりからはじまるこの話はというのだ。
「そうですね」
「あれ主人公在原業平よね」
「はい、そう言われていますね」
「美男子の失恋と傷心の旅がなの」
「好きで」
「そう、そして」
それでというのだ。
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