第三章
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「右手は木陰で左手は田んぼだけれど」
「妖怪に見付かったらやばいか?」
「だからか」
「隠れるか?」
「襲って来る訳でもないしいいだろ」
友人達は彼にこう返した。
「別にな」
「驚かせる位だしな」
「それにどっちに出るかわからないしな」
「隠れなくてもいいんじゃないか?」
「そうかな、けれど道の真ん中にずっといても車に迷惑だから」
通行の邪魔になるというのだ。
「ここに来るまでもたまに車通っていたし」
「だからか」
「何処かに隠れるか」
「そうするか」
「やっぱりそうするか」
「こっちに隠れようか」
山影は右手の木陰を見て友人達に言った、すると友人達もそこがいいかということになって自転車をそれぞれ道の端に置いてだった。
木陰に隠れた、すると。
「もうだね」
「十二時か」
「妖怪が出る時間」
「遂にその時間になったんだな」
「それじゃあな」
「うん、出るよ」
その糸引き婆がというのだ。
「これからね」
「本当に出るか?」
「出てどんな妖怪だ?」
「この目で見て確かめるか」
「ああ、いよいよな」
「そうしようね」
友人達に言ってだった。
山影は隠れたまま周囲を見回した、友人達もそうしたが。
ここでだ、友人の一人が他の面々に言った。
「おい、出たぞ」
「何処だ?」
「何処に出たんだ?」
「あそこだよ」
彼等から見て反対側の左手の田んぼの方を指差した、するとそこに白い着物を着た長い黒髪の若い女が座ってだった。
昔の糸引きの機械で糸を引いていた、皆その女を見て言った。
「間違いないな」
「ああ、糸引き女だ」
「そうだな」
「聞いたままじゃねえか」
「本当にいたんだ」
山影は驚きを隠せない顔で言った、その女を見て。
「糸引き女は」
「そうだな」
「じゃああの妖怪を見ているとな」
「婆さんになるんだな」
「そうなるんだな」
「そうだね」
山影は友人達の言葉に頷いた。
「噂によると」
「そうだよな」
「見惚れているとな」
「やがてそうなるんだよな」
「それで笑ってくる」
「何かそれだけで」
老婆に変わった妖怪に笑われてというのだ。
「終わりみたいだけれどね」
「襲われたり化かされたり食われたりな」
「そんなことはないみたいだな」
「じゃあ安心していいか」
「そんな妖怪じゃないんならな」
「うん、ただそれってね」
山影は糸引き婆がずっと静かに糸を引いているのを見ながら言った、静かに働いている様は田んぼの上にいることを考えると非常に場違いであった。
「妖怪っていうか」
「いや、妖怪だろ」
「どう見ても」
「そんなことするって」
「妖怪だろ」
「妖怪じゃなくて変化じゃないかな」
こちらになるというのだ
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