第三章
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そしてだった。
浪速区の夜の道を二人で歩いていると。
薫子はこう言った。
「来ましたわ」
「右手か」
「ええ、そちらですわ」
「これで後ろ見てみろ」
こう言って太一が出したのは。
手鏡だった、それを薫子に渡して言った。
「今からな、街灯で結構明るいしな」
「鏡越しにですわね」
「後ろ見てみろ」
「わかりましたわ」
薫子も頷いた、そしてだった。
太一から手渡された鏡越しに後ろを見た、太一もその鏡を覗いたが。
薫子の後ろに江戸時代の丁稚、時代劇に出て来る様な恰好のそれがいた。太一はその丁稚を見て言った。
「こいつだな」
「そうですわね」
薫子もその丁稚を見て言った。
「今時こんな格好の方おられませんし」
「他に人もいないしな」
「間違いないですわね」
「ああ、こいつがな」
「袖引き小僧ですわね」
「間違いなくな」
見れば丁稚、袖引き小僧は見付かったという顔で鏡の中で焦った顔になっている。その顔からも確信出来た。
「何か思えば」
「丁稚さんでしたのね」
「顔も子供だしな」
「確かに小僧さんですわね」
二人で袖引き小僧を見つつ話した、そして。
袖引き小僧は鏡の中から姿を消した、何処かへと逃げ去ってしまった。太一はそこまで見てから薫子に言った。
「俺の予想通りだったな」
「鏡越しに見れば、ですのね」
「見えたな」
「鏡は真の姿を映す、でしたわね」
「ああ、見えなくてもな」
そうであってもというのだ。
「鏡にはな」
「ちゃんと映りますのね」
「そう言われてるな」
「ええ、よく」
「ゲームでもそうだしな」
「ラーの何とやらですわね」
「あれでも王女様が犬に変えられていてもな」
二番目の作品でのことだ。
「そうだったな」
「ええ、モンスターが王様に化けていても」
薫子は三番目の作品の話をした。
「他にはモンスターが呪文で化けても」
「それ四番目だな」
「でしたわね、兎に角鏡はそうしたもので」
「ああ、映し出すんだよ」
その真の姿をというのだ。
「そうしたものだからな」
「だからですわね」
「ああ、妖怪の姿が見えなくても」
例えそうであってもというのだ。
「しっかりとな」
「映し出してくれますわね」
「ああ、それでお前を見てもな」
鏡に映る薫子をとだ、太一はこうも言った。
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