第二章
[8]前話
「水にも入るな」
「水鳥だったらな」
「飼い主が撃った水鳥は水の中にいてな」
そしてというのだ。
「それを捕まえるからな」
「だからか」
「ああ、それでだよ」
まさにというのだ。
「水に入ることに抵抗なくてな」
「むしろ好きか」
「泳ぎも達者なんだよ」
「そういえばふわりただお水が好きなだけじゃなくて」
母がここで気付いた、二人のやり取りを聞いていたがここで言ってきたのだ。
「泳ぐの上手だわ」
「そうだろ、教わってもないのにな」
「自然にね」
「それもな」
「元々なのね」
「そうした犬だからだよ」
水鳥を捕まえる為に水に入ることが多かったからだというのだ。
「習性ってやつだ」
「そうね」
「ああ、しかしな」
それでもとだ、夫はさらに話した。
「あの馬鹿共はふわりがお水に入ると最初は笑っていてもな」
「邪険にしだすと」
「やっぱり怒っただろうな」
「そんなことは知らないから」
「知ろうともしなくてな」
知らないどころかというのだ。
「犬のことなんてどうでもいいんだよ」
「可愛がっていても」
それでもというのだ。
「実はそれはなのね」
「おもちゃとしてでな」
「犬、命あるものとしては」
「全く思っていなくてな」
「それでなのね」
「そんなことも知らないさ」
一切、そうした言葉だった。
「あいつ等は」
「本当に犬飼う資格のない人達だったのね」
「そうだ」
まさにというのだ。
「本当に最低な連中だな」
「そうね、私達はそんな人達じゃないし」
「そうもなりたくないな」
「だったらじっくりとね」
「トイプードルのことも勉強しながら飼っていくぞ」
「そうね、ふわりもその方が嬉しいでしょうし」
今度はそのふわりも観て話した。
「これからもね」
「やっていくぞ」
「そういうことだから」
妻は今度はふわりに優しい声をかけた。
「ふわりも宜しくね」
「ワンッ」
ふわりは二人の言葉を受けて一声鳴いた、まだ父からブラッシングを受けていたが母に顔を向けてそうした。その尻尾は嬉しそうに動いていて夫婦はそんな彼女を見てそのうえで自分達も笑顔になった。
水が好きな理由 完
２０２１・４・２８
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