第104話『予選結果』
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」
「そうね。まさか私たちの代で出れるとは思わなかったわ」
そう言って、終夜と緋翼は笑った。
万年予選落ちの【日城中魔術部】。そんな弱小チームが、ようやく日の目を見る時が来たのだ。喜ぶ気持ちはもちろんわかる。
そして彼らが本戦に出場できるのも、予選で1位をもぎ取った結月と伸太郎の手柄が大きい。ただその一方で、
「でも結月や暁君と違って、俺の順位はあまり……」
晴登としては、今回の予選結果をあまり好ましく思っていない。理由は単純、自分の実力で取った順位と言えないからだ。
もちろん競技中は、本戦出場のために仕方ないと割り切ってはいたが、やはり心の奥底では納得していなかったようである。
もし、結月と伸太郎の1位がなければ、確実に今年も予選落ちの流れだったろう。間一髪とはまさにこのことだ。
しかし、そんな暗い表情をする晴登に、終夜は声をかける。
「何言ってんだ。歳上の魔術師相手によく健闘した方だろ。猿飛さんの助けがあったとはいえ、お前の実力も充分に発揮してたはずだ」
「そうですかね……って、え? どうしてそれを……?」
ありきたりな慰めだと、そう思っていたところで、ふと違和感に気づく。そして、失念していたであろうことに思い当たり、羞恥心が込み上げてきた。
「ん? 不思議な話じゃないだろ。予選の状況は逐一モニタリングされてたんだから。ちなみに、お前が抱きかかえられてたとこもバッチリ映ってたぞ」
「あ〜〜〜!!!」
各地で行なった予選の様子を観客が見るにはその方法しかあるまい。晴登が参加した競走でも、きっとドローンか魔術的な何かで中継をされていたのだろう。
そして今回の競技で、最も人に見られたくなかったシーン。それが会場中に広まっていた事実を知り、晴登はベッドに布団を被って蹲る。夏だから暑かった。
「あ、それならボクも見てたよ、ハルト」
「結月も!? いや、あれは助けてもらっただけで、決して他意は……!」
恋人に別の女性を抱えられてる所を見られるなんて、恥ずかしい以上に罪悪感が大きかった。下手をすると、浮気と疑われてもおかしくない。
そう思って必死に弁明すると、結月はうんうんと頷いて、
「そうだね、わかってるよ。だからボクも抱きかかえていいかな?」
「何でそうなるの!?」
手を広げて、晴登へとにじり寄ってくる結月。なぜだろう、笑顔なのにとても怖い。目が笑っていない気がする。さすがに捕まるのはマズそうだ。
「ったく、そこの夫婦は置いといて話進めるぞ。まず本戦に出場するに当たって、選手4人ってのは絶対条件だ。だから俺が補欠の枠から出る必要がある。つまり……暁、代わってもらっていいか?」
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