第一章
[2]次話
歩けなくなっていた犬
アメリカフロリダ州エバーグレース近辺の高速道路でのことだ。
その夫婦は夜その高速道路を車で走っていた、その中で。
「待って」
「どうしたんだ?」
「さっき犬がいたわ」
「犬?」
「ちょっと戻って」
「ああ、わかった」
夫のゲオルギー=トロシチェフは妻のアンナ=トロシコワの言葉に頷いた。夫は長身で茶色の髪で目は青だ。身体つきはがっしりとしている。妻は小柄ででっぷりとしていて色素は全体的に薄く金髪碧眼だ。
夫は妻の言葉に頷いて車を戻すとそこにだった。
道の端に立ち止まって動かない犬を見た、車のライトに照らされたその犬を見ると。
「これは」
「酷いわね」
「クゥ〜〜ン・・・・・・」
その犬を見て二人共まずは言葉を失った。見れば。
身体は真っ赤にただれていた、そしてどうも目も見えない様だ。まともに歩くことも出来ていなかった。
身体の大きさや体型顔つきからマスチフの様だ、だが。
「皮膚病か」
「全身ね」
「それで目も見えていないみたいだな」
「しかも凄く弱っていて」
「動けないな」
「本当にね」
それこそというのだ、そして。
夫も妻もお互いの顔見て同時に言った。
「助けよう」
「助けましょう」
二人同時に言った。
「これは見ておけないわ」
「ああ、だからな」
「助けましょう」
「絶対にな」
二人でこう話してだった。
犬を車に乗せてすぐにカーナビが教えてくれた近くの動物の保護施設に連れて行った、そのうえで犬を施設のスタッフの人達に診せると。
スタッフの中にいた獣医が二人に顔を顰めさせて話した。
「あまりにも酷いです」
「あの子は」
「そうですか」
「はい、全身疥癬で」
それにかかっていてというのだ。
「身体のあちこちが赤くただれています」
「だからああなっていますか」
「そうですか」
「そして目も睫毛が逆睫毛になっていて見えなくなっていて」
それでというのだ。
「栄養失調で脱水症状になっていて」
「弱っていたんですね」
「それで歩けなくなっていて」
「そうなっていまして」
それでというのだ。
「危なかったです、ですが手遅れではなかったので」
「助かりますか」
「そうなっていますか」
「はい、後はこちらで治療しますので」
「完治しますか」
「そうなりますか」
「大丈夫です、ですがあの子は野良犬ですね」
獣医は夫婦にこのことを問うた。
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