暁 〜小説投稿サイト〜
疥癬に苦しんで
第二章

[8]前話
 自分の前に連れて来られたモジョを見た、そのうえで話した。
「この子をですね」
「よくこちらに連れて来てくれました」
「あまりにも酷い疥癬でして」
「若しです」
「貴方が連れて来てくれないと」
「危なかったです、ですが」
 それでもとだ、スタッフの人達は彼に話した。
「よく連れて来てくれました」
「ボロボロではっきり言って醜い」
「そんな様子でしたが」
「よくこの子を助けてくれました」
「そうした子を」
「外見はすぐに治れば戻ります」
 ワーグナーはスタッフにこう答えた。
「それだけです、ですが命はです」
「そうはいかないですか」
「だからですか」
「それで、ですか」
「助けてくれましたか」
「獣医ではないので治療は出来ないですが」
 それでもというのだ。
「私は私の出来る限りのことをしたいので」
「それで、ですか」
「助けてくれたんですね」
「そうしてくれたんですね」
「はい、じゃあモジョ今から一緒に暮らそう」
「ワンワン」
 モジョは自分に優しい声をかけてくれた彼に尻尾を振って応えた、そうして彼のところに行った。するとペネロペもだった。
 モジョのところに来た、すると二匹はお互い尻尾を振って向かい合った。その二匹を笑顔で見てだった。
 ワーグナーは二匹を連れて家に帰った、スタッフの人達はその彼を見送ってから話した。
「あんな人がいるなんて」
「あれだけ酷い疥癬で醜くなっていた子を偏見なく助けるなんて」
「外見は治療すれば助かる」
「そう言ってですから」
「本当に素晴らしいですね」
「人間ああした人になりたいですね」
「かなり難しいですが」 
 それでもというのだ。
「ああした人になって欲しいです」
「そうですね」
「そしてあの人なら」
「モジョを幸せにしてくれます」
「ペネロペもそうしたんですから」
「あの人ならそうしてくれますね」 
 ワーグナーを見送ってから話した、その後ろ姿に神々しいまでの光も見たからこそ。それはまるで天使の様であったと彼等は後で多くの人に話した。


疥癬に苦しんで   完


                 2021・4・21
[8]前話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ