第一章
[2]次話
孤独なチンパンジー
エステル=ラバランド、黒髪で黒い目で知的な顔立ちの彼女はジェーメイン=アベベその島に住んでいるアフリカ系の中年男性に暗い顔で問うた。
「では三年の間ですか」
「そうなんだ、もうこの島でね」
ジェーメインんはエステルに真剣な顔で話した。
「ずっとだよ」
「一匹だけで、ですか」
「家族がいなくなってからね」
「そうですか」
「二十匹いたのがすぐに半分位になって」
そしてというのだ。
「そえで今はだよ」
「あの子だけですか」
「そうなったんだ、わしはご飯をあげて」
ジェーメインはさらに話した。
「声をかけているけれど」
「貴方以外はですか」
「誰もしない、あいつは一体何をしたんだ?」
エステルに対して問うた。
「これまで」
「ある場所で実験に使われていまして」
「それでかい」
「それが終わると」
実験用としての役割を終えると、というのだ。
「この島に他の子達と一緒に」
「まとめて捨てられたんだね」
「そうです、ここはチンパンジーが暮らす場所ではないですね」
「わしはチンパンジーのことは詳しくないがすぐに半分死んだんだ」
このことから言うのだった。
「だったらだよ」
「もうそれで、ですね」
「答えは出ているよな」
「そんなとこに捨てて」
「実験に使っていた人達はほったらかしだね、時々餌をやっていたが」
「それではどうしようもなかったからですね」
「あいつだけになったんだ、わしだけじゃあいつをこれ以上どうにも出来ない」
ジャーメインは苦い顔で述べた。
「だからあんたがどうにか出来るなら」
「はい、援助してくれる人もいますし」
「助けられるかい」
「そうさせて下さい、ですがこれまでずっとあの子にご飯をあげてですか」
「声をかけて面倒は出来るだけ見ていたつもりだよ」
「そのこと本当に有り難うございます」
「見ていられなかったからな、じゃあ頼むな」
エステルに切実な顔で頼み込んだ、そうしてだった。
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