第1部
第1部 閑話
閑話1・値切り交渉
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リはそれを受け取ろうとしない。それどころか、気まずそうな表情で道具屋のおじさんの方を見ている。
「どうやら勇者様たちは、お金に不自由のない生活を送っているようですね」
満面の笑みでその一言を言い放つ道具屋のおじさん。ユウリは若干顔を引きつらせながらも、なんとか声を絞り出す。
「こ、これはたまたま強運の持ち主である遊び人が、たまたまカジノでたまたま大金を手に入れたからであって、決して日常茶飯事では……」
「いえいえ、先ほどの話を聞いてると、とても今日初めてカジノをやったとは思えないですね。しかも短期間で相当な額のゴールドを稼いでいるようで……。いやはやなんとも、私もその強運の持ち主である彼女にあやかってみたいものですな」
シーラの登場をきっかけに、すっかり立場が逆転してしまったようだ。せっかくの値引き交渉も、この雰囲気では元に戻せそうにないというのが私にもわかる。
「? どーしたの? いらないの?」
シーラが不思議そうにユウリに尋ねる。そして受け取らないと判断した彼女が自身の手を引っ込めようとしたその時、突然ユウリが無言でその皮袋をひったくった。
そして道具屋のおじさんのほうへ振り返り、
「もう二度とお前のところで薬草は買わん!!」
と一声発し、皮袋を握り締めたままその場から走り去ってしまった。
「……えーっと、どういうこと?」
私は勇者の不可解な行動に、これまた不可解な言葉を発することしか出来なかった。
「とりあえず、何か買っていって行きませんか? お嬢さん」
最初に会ったときと全く同じ表情で声をかける道具屋のおじさん。
結局私は最初に買おうとした薬草35個を、定価で買うことにした。
あとでユウリに何か言われても、知らん顔しておこう。
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