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Fate/WizarDragonknight
勝手にケーキを切らないで
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 ケーキの現場では、相変わらず誰が切り分けるかで揉めており、決着はしばらく着きそうにない。

「家族には今のところ隠し通せてるし、そもそもあたしは自分が今まで通りの美樹さやかだって思ってるよ。それとも、人間の心のままファントムになったケースって、初めて?」
「……いや」
「だったら、少しは信用してよ」

 さやかがポンポンとハルトの背中を叩いた。

「ねえ、魔法使いさん」
「……何?」
「あたしのこと、倒そうと思ってる?」
「……前にも言ったでしょ。君が……人に危害を加えない限り……」
「怖い顔で言ってるよ」

 さやかの言葉に、ハルトは押し黙った。

「頭ではそう思ってるけど、心の中では納得いかないって感じ。あたし、そんなに信用してないんだ」

 さやかはコーラが入ったコップを揺らす。彼女のコップでは、コーラが波打っているが、やがて水面の中心に、小さな水柱が立った。

「何のために戦ってるかは知らないけどさ。あたしは、生きていちゃいけないのかな? ファントムは全員、倒すべきだと思う?」
「……」

 その言葉に、ハルトは無意識にケーキの切り分けでわちゃわちゃしている響へ目を反らしていた。彼女が言った、ファントムとの共存のことを思い出す。

「分からないけど……俺は……」
「まあ、別にどうでもいいけどね」

 さやかは立ち上がる。

「魔法使いさんがあたしを倒そうとしてもしなくても。さっき言った通り、あたしの意識は、美樹さやかのまま。現に、あの時ファントムになってなかったら、あたし多分死んでたし。助けられそうにもなかったでしょ?」
「……」

 ハルトは口を閉じた。
 病院でさやかを救えず、恭介のアマゾン化を食い止められなかった。
 さやかの顔を見ることもできず、ハルトはラビットハウスの床に目線を落とした。

「あ、さやかちゃん! 久しぶり!」

 その声は、可奈美のものだった。
 二皿のケーキを持って、ハルトとさやかに渡す。

「私のこと、覚えてる?」
「おお、あの時の刀使さんじゃん! ここにいたんだ! あの時はどうもどうも!」

 さやかはケーキを受け取り、お辞儀をする。

「うん。でも、そのあと色々大変だったって、この前まどかちゃんから聞いたんだけど」
「……!」

 可奈美とさやかが顔見知りだったとは知らなかった。必然的に、さやかがファントムになったことも可奈美には伝えていない。
 だが、さやかは笑顔の仮面で答えた。

「大丈夫大丈夫! まあ、アマゾンに襲われて本当に死にかけたけどね」
「ごめんね。駆けつけられなくて」
「気にしないでよ。あ、このケーキ美味しい!」

 さやかがフォークで生クリームケーキを切り取り、口に運ぶ。

「こ
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