始まりから夏休みまで
兄がやってくる話
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」
でも、嫌だ。
あの家に戻りたくない。
その意志を示そうとしたその時、強烈なビンタで僕の言葉は遮られた。
「…っ。」
「口答えすんなよ弟の分際でよぉ…お前、自分の立場理解してねぇな?それとも低学歴だから分かんねぇのか?」
「そんなこ」
「低学歴だから分かりませんって言うんだよ!!んなこともわかんねぇのかてめぇは相変わらずよぉ!ああ!?」
周りの迷惑も考えず兄は怒鳴りつける。
同じように広場にいた人達はこちらを見ながらヒソヒソ話したり、巻き込まれないようにとそそくさとこの場を去る者もいた。
そして、
「おい、なんだこれ?」
逃げようとした際に落としたレジ袋を兄は拾い上げる。
中身は勿論変わりなくペンだ。
それを見ると兄は溜息をつき、
「はぁ…まだこんなこと続けてんのな…。せっかく俺が兄としてやめさせてやったのに。」
「違う、ぼ、僕はもう…」
「お前、パパとママの言ったこと忘れたか?こっちはストレスためながら頑張ってんのにてめぇは呑気にお絵描きごっこか?絵を描いて何になる?あれ、なんの得にもならない時間の無駄っつったよな?」
絵を描くこと。
それは何よりも無駄な事だし誰の得にもならない。
それしか得意なことがないボクは幼少の頃から両親にそう言われてきた。
そうして兄も、絵しか描けない僕でストレス解消する為の遊びを始めた。
「パパは医者で人々の命を助けるため頑張ってる。ママも議員で、国を良くするため尽力してくれてる。医者も議員も人のためになる仕事だ。けど絵描きは何になる?穀潰しのしょうもねぇ気持ち悪ぃ自己満ナルシストだろ?」
「…。」
「ママも言ってたろ?ゴッホってやつはどうなった?好きなことした結果絵は売れず、穀潰しになって最後は自分の哀れさに気付いて自殺したって。てめぇもそうなるぞ。おい。」
「…。」
「聞いてんのか!?あぁ!?」
掴みっぱなしの手首は離されるが、今度は胸ぐらを掴まれぐいと引き寄せられる。
脂ぎった兄の顔がすぐ近くまで迫り、息を切らしながらまくし立てる。
「いいか!?弟ってのは兄のために全てを捧げんだよ!!折角こうして障害者と変わりねぇお前を拾ってやってんだ!だったらそれに答えて奉仕しろ!俺はてめぇと違って忙しいしストレスもたまんだよ!」
「…さい。」
「あ?」
ふと、ある感情が込み上げる。
兄に対する恐怖しかなかったのに、まるで違ったものがわいてくる。
怖い?何を怖がってるんだぼくは。
目の前にいるのは…縁を切ったハズの兄。
そうだ。ただの兄だ。
どうして僕はこの程度の人間に、ペコペコ頭を下げ、怯え、従わなくちゃならない?
なんだかこいつを恐れるのがバカバカしくなってきた。うん、違う。恐れるのはお前。恐れられるのは
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