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Fate/imMoral foreignerS
始まりから夏休みまで
兄がやってくる話
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わないし、設備だって整えない。
元からお栄ちゃんが来るからあらかじめ用意しておいた。いや、そんなすぐにバレる嘘は通用しない。

「ナァ、答えとくれ。マイは絵を描いてるのかい?」
「か、描いてないよ。そろそろ朝ごはんにしよっか。」
「誤魔化すな。嘘もつくな。おれの質問に答えろ、マイ。」
「…。」

手の震えが止まらない。
でも…決めたんだ。もう絵は描かないって。
それなのに、また描こうかなって思って昨日みたいに道具を買ってきちゃう。
それでも、いざ描こうとすると…"あのこと"を思い出して怖くなって…。

「…っ!!」
「あっ!おい!」

お栄ちゃんから昨日買ってきたものをひったくり、僕は逃げる。

「マイ!どこ行くんだ!おい!!」

必死に僕のことを呼ぶけれど、僕は振り向きもせずそのまま靴を履いて飛び出すように出ていった。
駐輪場まで駆け、自転車に乗ってがむしゃらにこぐ、
どこでもいい、どこかに逃げたかった。
だってそうしないと、お栄ちゃんに絵のことを聞かれるから。

確かに僕は絵を描いていた。
そう、描いて"いた"。
昨日ピンクの髪の変な人にも同じような事を聞かれて、昔のことが嫌でも思い出される。
もういい、もういいんだ。
僕はもう絵なんて描かないし描きたくもない。
誹謗中傷もいやだ。心がボロボロになるまで袋叩きにあうのも嫌だ。
絵は好きだった。
でも、今はもう大嫌いなんだ。

?

「…。」

それから自転車で走り続けること10分程。
気付けば僕は駅前の広場のベンチに座り込んでいた。
よく待ち合わせ場所に使われるそこは、今の時間スーツを着た人がタバコをふかしていたり、若者が周囲の人達のおかまいなしに大声で笑いながら話をしている。
なんてことない風景だ。

「…。」

思わずお栄ちゃんからひったくってしまった、昨日買ったものを見る。

絵なんて描きたくない。そう思っているのに、また描きたいって思ってしまう。
だからこうして…出来るんじゃないかなって使いもしないペンを買う。
バカみたいだ。描きたいのか、描きたくないのか、自分ですら分からない。
昔から僕は自分じゃ決められない。いや、自分で決めることが許されなかった。
僕は頭が悪いから、あの家で何かを決める権利はない。
認めてもらいたかったら、結果を残しなさい。
恥ずかしいからお父さんお母さんと呼ばないで。
あなたが実の子だと知られたら、一家の恥だから。
あなたに出来るのは尽くすことだけ。
勉強のできないあなたは勉強ができるお兄さんに尽くして全力でサポートしなさい。
兄に尽くすのは弟の役目。
絵を描いてなんになるの?あんなの遊びでしょ?
賞を取ったからって誇らしくしないで。絵描きっていうのは穀
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