第三章 リベン珠
第36話 月の都よ、私は帰って来た!
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理はないかと思い直すのであった。
何せ、これは勇美が今までで一番利益を上げた瞬間だからである。自分達の力で事を成し遂げた先に手に入れたという結晶なのだから。
そう、自分達である。つまり、勇美と鈴仙の二人の力で築き上げた利益という事だ。
だから、鈴仙もその利益を素直に受け取る算段でいた。それは、勇美が利益を独り占めしない性格を考慮しての事であった。鈴仙には金銭的欲求はそこまでないのだが、そんな勇美の気持ちを考えれば、自分もその利益に享受するのがベストだという事は彼女も分かる所なのである。
無論、鈴仙としても全く魅力のない話ではなかった。何せ、永琳から渡されるお小遣いでは些か物足りないと思う所もなくはなかったからだ。
故に、この場にはサグメから月の遺産の『ごく一部』を受け取る事に反対する者はいなかったという事であった。
『これにて約束は果たしましたよ。これで問題はないでしょう?』
そのサグメの問いに対して、二人とも承諾の返事で返すのだった。最早そこに否定する意味合いなどはないのだから。
ちなみに、勇美はこの財宝をすぐには換金する算段は付けてはいなかったのだ。
それは、確かにサグメは幻想郷が脅かされる事となった最後の要因であるが、しかしそれでも彼女と異変の大元の解決の為に協力した事により生まれた絆も本物であるからだった。
そんなサグメとの絆の結晶をすぐにはお金には変えず、それが必要な時が来るまでは自分の手元に置いておきたいというのが勇美の心情なのである。
と、ここで財宝の受け渡しの件については解決済みの話題となったのだ。だが、最後にサグメはある提案をせずにはいられなかったのである。例えそれがダメ元でも。
『ところで鈴仙。あなたは月の都に戻る考えはありませんか?』
「!?」
その問いに鈴仙は驚く。だが、それも無理はないというものだろう。何せ彼女の今後の将来に影響する内容なのだから。
『あなたは今回の事で月を救った英雄のようなものです。故に今後あなたが月に戻ってくれば、あなたの対応も優遇される事になるでしょう? どうですか、悪い話ではないと思うのですが』
「……」
思いもよらぬ……いや、自分が成し遂げた成果から多少は予測出来たかも知れない提案に、鈴仙は暫し目を白黒させてしまう。
だが、彼女の答えは決まっていたのだった。そして鈴仙は自分の意思を迷う事なく言葉に紡ぐ。
「サグメ様。折角の申し出ですが、それはお断りさせて頂きます。私はもう地上の兎になると決めている事ですから。その考えは今後も覆る事は有りません」
悪くない提案にそう鈴仙が結論付けたのには様々な思惑が絡み合っていたのだった。
まず、彼女にとって幻想郷は大変居心地の良い場所だったからである。ここでは月にいた頃には知り得ない出来事が彼女を待って
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