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欠かせない人
第二章

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「その中でもな」
「丹羽さんは特にだよ」
「縁の下の力持ちだよ」
「欠かせない人だよ」
「本当にな」
「しかし」 
 ここでだ、誰かが首を傾げさせてこんなことを言った。
「よく丹羽さん総務に来させてくれたな」
「そうだよな」
「あんな出来た人もっと華やかな場所にってなるよな」
「大抵な」
「けれどそうならないでな」
「総務に回してくれたなんて」
 それはというのだ。
「出来た人事だな」
「人事部がそうしたとしたら凄いな」
「本当にな」
「よくあそこまでの人総務に回してくれたな」
「まさに総務の中の総務だな」
「秘書になれるかも知れない人だけれど」
「よく総務に回してくれたよ」
 総務部の面々はこう言うのだった、千景のことだけでなく彼女を総務に配属させてくれたことに感謝もしていた、だが。
 ある重役がこんなことを言いだした。
「丹羽君は秘書になれないか」
「秘書にですか」
「出来ると聞いているよ」
 重役は白石に話した。
「凄くね」
「だからですか」
「そう、総務じゃなくて」
「秘書課にですか」
「来てもらってね」
 そうしてというのだ。
「その才能を発揮して欲しいんだよ」
「あの、それはです」
 白石は重役に真剣な顔で言った。
「こちらとしては」
「駄目かい」
「丹羽君は総務部に欠かせません、そして総務部もです」
「丹羽君をか」
「欠かせない人なので、それにです」
 白石はさらに話した。
「総務も会社に必要ですね」
「それは言うまでもないことだよ」
 重役は白石に確かな声で答えた。
「もうね」
「はい、会社の中の色々な雑用もしてです」
「会社を裏から支えてくれてるね」
「そうした場所です」
「僕だってわかってるさ、山口六平太も読んでいたしね」
 その総務を描いた漫画だ、長い間続いたサラリーマンものの名作である。
「会社にずっといるからね」
「では」
「しかしね、優れた人だから」
 それでというのだ。
「その能力をね」
「秘書課にですか」
「欲しいと思ったんだよ」
「そうですか、ですが」
「総務としてはかい」
「彼女はいて欲しいです」
 絶対にという言葉だった。
「ですから」
「どうしてもかい」
「そこはわかって下さい」
「部長がそこまで言うなら」
 重役も折れた、それでだった。
 千景は総務部に残ることになった、だがこの重役はやはり千景を秘書課に欲しかった。それで専務に話した。
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