第1部
ポルトガ〜バハラタ
シーラの決意
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た。そして、二人がこちらを気にする前に、そそくさとこの場から去ろうとダイニングを出た。
どんっ!
前をよく見ていなかったせいで、出合頭に誰かとぶつかってしまった。顔を上げると、一足先に降りてきたナギと目が合った。このやりとり、これで何度目だろう。
「ごっ、ごめん!」
「ああ、オレもよく見てなかった。……どうした?」
ナギが心配そうに顔を覗き込んでくる。すると、なぜだか涙が溢れだした。
「ミオ!? まさか打ちどころが悪かったのか!?」
「ううん、違うの。ごめん、ちょっと一人にさせて」
そういうと、私は心配するナギの手を振り払い、外へと飛び出していった。
満月に近いのか、今夜の月は眩しいくらいに明るい。
ときおり雲に隠れて黒い影となるが、しばらくするとまた顔を出す。
ずっと上を向いていると首が疲れてくるので、今度は眼下に広がる聖なる川を眺めてみると、水の音と川のせせらぎが、私のぐちゃぐちゃになった心をいくらか洗い流してくれるように感じる。
私はタニアの家から少し離れた河原で、ぼんやりと眺めながら座っていた。
こうやってじっとしていると、いろんな考えが浮かんでは消え、それを繰り返していくうちに、次第に私の心を落ち着かせてくれる。
冷静になったところで、私はこれからどうすればいいか考えていた。
あんな態度で席を外した後で、どうやって戻ればいいだろう。
でも、あんなにあっさりシーラを行かせるなんて、ユウリもユウリだ。ちょっと薄情なんじゃないか。
せっかくみんなが仲良くなってきたと思ったのに、どうして別々に行動しなければならないんだろう。
思わずはあ、と深いため息をつく。
……わかってる。これこそ子供のわがままなんだって。私たちは、お遊び気分でピクニックに行くんじゃない。
魔王を倒すためには、今の自分を変えなくてはならない。それが、ずっとシーラが悩んで導き出した彼女なりの答えなのだ。
それなのに私は、彼女の出した答えに背を向けている。それは彼女の気持ちを理解していないということだ。
何が「いつでも力になる」だ、結局口だけじゃないか。
私は自分自身に怒り、そして決断した。
「あ、いたいた! おーい、ミオ!!」
私を呼ぶ声に反応すると、家のほうから手を振ってやってくるナギの姿があった。
「どうしたんだ? 何があった? またユウリにいじめられたか?」
「ううん、なんでもないよ。大丈夫だから、家に戻ろ?」
そういって戻ろうとする私の腕を、力強く掴んで制止するナギ。
「はぐらかすなよ。あんな顔して、何でもないわけないだろ」
う、と私は言葉に詰まる。普段大雑把な性格なのに、こういう時はなんて鋭いんだろう。
「……あのさ、ナギ。シーラから聞いたんだけど、本当にシーラ
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