第1部
ポルトガ〜バハラタ
はじめての黒胡椒
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いれる。すると、普段全く表情に出ない彼の目が見開いた。
「なるほど……。ポルトガの王たちが魅了されるだけあるな……」
私も一口食べてみる。口にいれた瞬間、鶏肉の香ばしさと黒胡椒の風味が口の中に広がっていく。塩との相性も抜群だ。
普段お店に出回ってるような鶏肉の香草焼きに、黒胡椒を数粒振りかけただけなのだが、こうも違うものなのか。
続いてパスタにも手を伸ばす。ニンニクをオリーブオイルで炒めたところに、野菜と茹でたパスタを絡めたシンプルな料理だが、これもまた黒胡椒によって素材の旨さを何倍にも引き立たせている。
「ミオが考えたこのパスタ、とっても美味しいわ!」
「タニアが作ったスープも、胡椒が利いててとても美味しい!」
タニアも蕩けそうな表情を浮かべながら次々に料理を口に運んでいく。
皆が料理に舌鼓を打つ中、マーリーさんはお腹がいっぱいになったのか、それとも今までの心労で疲労が溜まっていたのか、うつらうつらとし始めた。
「やだ、おじいちゃん! こんなところで寝ないで!」
タニアが慌てて傾きかけたマーリーさんの身体を支える。だがすでにマーリーさんの意識は夢の中に行ってしまったようで、ぐうぐうと寝息を立てている。
「もう、おじいちゃんったら……。ごめんなさい、祖父を寝室まで運んでいくわね」
「一人じゃ大変だろ? 手伝うよ」
ナギが席をたち、タニアと共にマーリーさんの肩を持って上げた。
「ありがとう、ナギさん。皆、おかわりもあるからゆっくり食べていってね」
そう言うと、タニアたちはマーリーさんを寝室へと運んでいった。
三人となったテーブルに、しばし静寂が落ちる。
食器の音が慎ましく響く。何か話題がないかと考えあぐねていると、
「あのさ、二人とも、ちょっといいかな?」
シーラの方から話しかけてきた。ユウリは視線をシーラに向けただけだが、おそらく肯定だろう。もちろん私も頷く。
「ありがとう。あのね、これからのことなんだけど……」
そのまま、彼女は言い淀む。少し待って、シーラはようやく口を開いた。
「……あたし、一度ダーマに戻ろうと思うの」
「!!」
思わず口に入れていたスープを吹き出しそうになった。
けれど顔を見ると、その決断が一朝一夕で決めたものではないことを物語っている。
「ど、どうして? 別に今じゃなくても……」
「ダメだ」
私の言葉を遮り、即座に否定するユウリ。
「今は一刻も早く船を手に入れて、魔王の城に行くまでの手がかりを探すのが第一だ。お前のわがままには付き合えない」
低い声で言い放つ勇者の言葉に、シーラは苦笑いを浮かべる。
「待ってよユウリ! そんな頭ごなしに否定しなくてもいいじゃない! シーラだって、それくらいわかってるよ!」
私が憤慨するが、
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