第1部
ポルトガ〜バハラタ
はじめての黒胡椒
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
う、助かったんだからいいじゃない。グプタさんだって、タニアを助けたい一心で向かったんだから」
その言葉にユウリは私をぎろりと睨みつけると、今度はこっちに矛先が向けられる。
「お前が言うな! 大体お前がバカな作戦を考えるからあんな面倒なことになったんだろうが!!」
「なっ……、ユウリだって納得してくれたじゃない!!」
私が火花を散らしていると、ユウリはなぜか下の方に目をやっている。何かと思って視線を下に向けると、先ほど切った指の先から、血がにじんでいた。
「なんだ、怪我したのか」
そう言うなり、ユウリは無言で私の腕を引っ張り上げると、ホイミの呪文を唱えた。
「!?」
「こんな大したことない怪我のために、貴重な魔力を使ったんだ。せいぜい俺に感謝しろ」
と、言うだけ言うと、さっさとリビングの方へ向かってしまった。
別に回復してなんて頼んでないんだけど。なんで一方的にそんなことを言われなければならないんだろう。
治してくれた感謝より、小さな怒りがふつふつと沸いてくる。すると、ふと視界の端でタニアがじっと私を見据えていた。
「な、何!?」
驚いてタニアの方を向くと、タニアは私と目を合わせた途端、にやっと顔を綻ばせた。
「やっぱり、あなたたち付き合ってるんじゃないの?」
「違うってば!!」
どこをどう見たらそう見えるんだ。私は全力で否定した。
夕餉の準備ができ、他の人もそれぞれ仕事を終えたのか、皆同じタイミングでダイニングにやってきた。
グプタさんは自分の家に戻り、ユウリはマーリーさんとともに一抱えほどの袋を運んできた。
「ユウリ、それなあに?」
「ポルトガ王に渡す分の黒胡椒だ」
ああ、そういえば、ポルトガの王様に頼まれてたんだっけ。ていうか、あれだけで一体どれくらいの値段になるのだろうか。
「あー、すげー腹減ったー!!」
ユウリたちのあとに大声を上げながら戻ってきたのは、ナギとシーラだった。今まで一緒にいたんだろうか?
「ミオちん、今日のご飯は何〜?」
「うんとね、野菜のスープとパン、あとガーリックソースのパスタと、鶏肉のバジル焼き!」
「ふぁ〜、おいしそう♪ 待ってた甲斐があったよ〜!」
パン以外はなんと、黒胡椒を使っている。他では絶対に食べることができないくらいの超高級料理だ。けれどタニア曰く、他国では高値で取引されているが、ここバハラタ地方では割とよく採れるため、一般家庭でもなんとか手が出せる値段なのだとか。どちらにしろ、旅がらすの私たちには二度と味わえない料理の数々だ。
皆揃ったところでお祈りをし、一斉に食べ始めた。
「やべえ、何これ?! ホントに鶏肉か?!」
開口一番、感嘆の声をあげたのは、真っ先に鶏肉にかぶりついたナギ。次いでユウリも自分の分の鶏肉を口に
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ