第1部
ポルトガ〜バハラタ
はじめての黒胡椒
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アさんに声をかけると、苦笑しながらそう彼女は答えた。
「タニアさんも、疲れてるのに大勢で押しかけちゃったりして、迷惑じゃない?」
「そんなことないわ。いつもおじいちゃんと二人きりだし、私はこういうにぎやかな方が好きなの。あと、さん付けはやめてね、タニアでいいわ」
そういうと、タニアは手際よく野菜の皮を剥いていく。
私も隣に立ち、一緒に野菜の皮を剥きながら、タニアと他愛のない話で盛り上がっていると、
「ミオは、恋人とかはいないの?」
と、突然突拍子もないことを聞いてきた。
「はい!? あ、いや、いないよ。そもそもそれどころじゃないもん」
「ええ!? もったいないわ、ミオなら二、三人ぐらいいてもおかしくないのに!」
いったいどういう意味なんだろう、と考えていると、
「ねえ、実はユウリさんかナギさんのどちらかと付き合ってるんでしょ? 正直に言いなさい!」
「ち、違うよ!! そんなわけないじゃん!!」
なんて人をからかってくるから、つい手元が狂って包丁で指を切ってしまった。
「痛っ!」
「やだ、大丈夫? ごめんなさい、私ったら調子に乗って……」
「いや、今のは私の不注意だから。気にしないで」
おとなしくなってしまったタニアに目を向けながらも、黙って切った指を舐めて痛みを和らげる。
すると、後ろから突然髪の毛を引っ張られた。
「ずいぶん騒がしいな」
振り向くと、呆れ顔で私の髪の毛を引っ張るユウリの姿があった。どうやらカンダタの子分を役所に送り届けて、今戻ってきたらしい。
「ユウリさん、ありがとうございました。ところで、グプタは……?」
「あいつならジジイと一緒に盗まれた黒胡椒を馬車から下ろしにいったぞ」
そうだった。盗賊たちを捕まえたとき、アジトにあった盗まれた黒胡椒も一緒に持ち帰ってたんだった。
「ジジイがこれを使えと言っていた」
唐突にそう言うと、ユウリはタニアに小さな袋を手渡した。
「何? その袋」
袋の中を覗いてみると、見たことのないほど小さい黒い粒がぎっしりと入っていた。
「ミオは初めて見るんだっけ。これが黒胡椒なのよ」
「えっ、これが?!」
この黒い粒々が黒胡椒……。調味料って言ってたけど、一体どういう風に使うのか見当もつかない。
「ユウリさん、今回は助けていただいてありがとうございます」
タニアは包丁を置き、ユウリに向き直って深々と一礼した。
「それと……すみません。あの人が身勝手な行動をしてしまったせいで、皆さんに迷惑をかけてしまって……」
「全くだ。運良くカンダタに捕まったからよかったものの、途中の森で魔物にでも喰われてたらどうすることもできなかったぞ」
ぴしゃりと言い放つユウリに、タニアが何も言えないでいたので、思わず私は口をはさむ。
「も
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