第1部
ポルトガ〜バハラタ
はじめての黒胡椒
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カンダタ一味を倒した後、私たちがバハラタの町に戻ったときには、辺りはすっかり日が暮れていた。
町の入り口を見てみると、どうやらまだグプタさんたちは戻ってきてないようだ。こっちはルーラで飛んできたので、当たり前と言えば当たり前だが。
「取り敢えず、先に着替えてきたらどうだ?」
ナギに言われ、改めて自分の身体を見てみると、せっかくマーリーさんに借りたタニアさんの服がボロボロになっている。
土ぼこりや擦りきれどころか、破れや血までついているので、洗ったとしても返せる状態にはならないだろう。
「うーん、私はここで待ってるよ。シーラはどうする?」
「あたしも皆と一緒に待ってる☆」
正直この格好で、服を貸してくれたマーリーさんのところに行くのは憚られる。シーラも同じことを考えていたらしく、二人ともここでグプタさんたちを待つことにした。
とはいえ、ボロボロの服を着て町の入り口に立っているのも気恥ずかしい。現に何人かの町人がこっちを二度見してくるのを見るたびに気まずくなる。
隣にいるシーラを横目で見ると、ご機嫌なのか鼻唄を歌っていた。わだかまりが解けたからか、どことなく清々しい顔になっている。
なんだかこっちまでご機嫌になってきてしまい、無意識に頬が緩む。
だけどこういうことにはめざといユウリに、「何間抜け面晒してるんだこのボケ女」とか言われてしまい、頬を膨らませる私。
やがて東の空を見てみると、薄紫にたなびく雲の狭間から、黒い影がこちらに向かってやって来ていた。近づくにつれ、それはグプタさんたちが乗っている幌馬車だということがわかる。けれど急いできたらしく、ひどく慌てた様子で手綱を引いている。
車輪と地面の擦れ合う音とともに目の前で止まった馬車の御者台には、息を荒げたグプタさんと、その横で必死にしがみつくタニアさんの姿があった。
「何かあったのか?」
ナギが御者台に座ったままの二人に尋ねると、グプタさんは青ざめた顔で歯をガタガタと震わせながら、こちらを向いた。
「皆さん、すいません!! カンダタを逃がしてしまいました!!」
『何だと?!』
ナギとユウリが口を揃えて叫んだ。その形相に、グプタさんはますます怯える様子を見せる。
「グプタさん、一体何があったんですか?」
私が問い質すと、グプタさんの代わりにタニアさんが説明してくれた。
「町に戻る途中、いきなり中から物音がして……。何かと思って後ろを向いたら、縄を解いたカンダタが馬車から転がり落ちたの!」
「そんな……! じゃあ自力で縄を解いたってこと?」
「くそっ、縄に何か仕込んでおけばよかったぜ」
ナギが歯噛みしながら呟く。
「ごめんなさい、僕がもう少し注意していれば……」
「いや、お前は悪くない。それに、カンダタたちをお前らに任せた俺た
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