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俺様勇者と武闘家日記
第1部
ポルトガ〜バハラタ
シーラの正体
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そうになった時に助けただろ。怒る理由が思い浮かばん」
 きっぱりと言い放つユウリの様子を見て、私は思い違いをしていることに気がついた。確かにカンダタと対峙したときも、呪文が使えることを隠した理由を尋ねただけで、特に責め立てるようなことは言っていなかった気がする。
 とはいえ、普段が怒っているのかそうでないのかわからない言動なので、本当はどういう感情を持っているのかは本人しかわからない。実際本人以外は怒っていると思っていただろう。
「俺が聞きたいのは、なぜ遊び人であるお前が僧侶の呪文を使えたのかってことだ。お前が住んでたアッサラームには、神父はいるが僧侶や寺院はいないはずだろ」
 ユウリの指摘に、シーラは小さく息を吐いた。そして、ユウリの態度にいくらか緊張が解けたのか、とつとつと語り始めた。
「本当はあたし、ダーマの出身なの」
 その言葉に、一驚したのはユウリだけだった。
 ダーマといえば、聖職者が集まる聖地であり、また自身の職業を変えられる場所、ということくらいしか知らない。特に私が住んでた田舎では転職など必要がなく、ほとんど無縁の場所だからだ。
 同じくナギも、ダーマという地名にピンと来ないのか、キョトンとした顔をしている。
 私とナギが顔を見合わせていると、察したユウリが教えてくれた。
「ダーマは僧侶や巫女が集まる場所だ。精霊神ルビスを信奉する神父やシスターと違い、彼らは世の理や自然の摂理を人々に説くことを業としている修行者でもある。普通はある程度年月を経てから僧侶に転職すると聞いたけどな」
「そうだね。でも、例外もあるんだ。ダーマの最高位……つまり大僧正の後継者は、生まれたときから僧侶見習いとして修行させられるの」
「大僧正の後継者……って、まさか!?」
 ユウリの言葉に、シーラは苦笑いを浮かべた。
「そう。今の大僧正はあたしのお父さん。あたしはその後継者として育てられたの」
 そんな……。昨日の話がまさかそんなスケールの大きなことだったなんて、思っても見なかった。
 夕べのシーラの話では、厳しいお父さんに嫌気がさして家出したって言ってたけど、今の話を聞いてると、家出なんて言う生易しいものではないことは私でもわかる。
 確か弟がいるって言ってたけど……。
「でも、五年後に弟が生まれて、一緒に修行してたんだけど、弟の方が才能があったみたいで、あたしは途中で修行を諦めたんだ。きっと弟がお父さんのあとを継ぐと思って」
「それで遊び人になったって訳か」
 納得したようにユウリが呟くと、シーラは頷いた。次に言われる言葉を恐る恐る待ちながら、目を伏せていると、
「わかった。それじゃあ町に戻るぞ」
 そういってユウリは、くるりとシーラに背を向けたではないか。あまりにもあっさりした反応に、私は思わず肩透かしを食らう。
「ユ
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