第1部
ポルトガ〜バハラタ
シーラの正体
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いいとは言えないんじゃないか。そんな思いが頭の中を渦巻いている。
とは言えナギたちの言い分もわかる。だったらシャンパーニの塔に行ったときも、ピラミッドに罠にかかったときも、戦力になったはずなのだから。
「ナギ」
「何だ?」
「シーラはきっと、隠したくて、隠したわけじゃ、ないよ」
「……」
「だから、あんまり、責めないで」
私は切実にナギに訴えた。ナギはしばらく黙っていたが、一言、
「あとは、リーダーの考え次第だな」
そう落ち着いた声で答えただけだった。
洞窟の入り口まで戻ると、確かにカンダタの仲間が、揃って大木の幹に縛り付けてあった。しかもご丁寧に、ラリホーの呪文までかけており、皆ぐうぐうといびきをかきながら寝ている。
ひとまず盗賊全員をバハラタの役人に引き渡すため、馬車に乗せることになったのだが。
「それなら、僕がカンダタたちを町まで送り届けますよ」
そう買って出たのは、グプタさんだった。彼はマーリーさんのお店の手伝いによく馬車を引いていたので、扱いには長けているらしい。
グプタさんにお礼を言い、盗賊たちとタニアさんを任せた後、残ったのは私たち四人のみ。
口の痺れもすっかり治ったので、この微妙な空気を打破しようと、自ら話を切り出そうとしたときだった。
「ミオちん、身体は大丈夫?」
洞窟から戻った後もずっと黙りこんでたシーラの方が、私に声をかけてきてくれた。
「あっ、うん! もう普通に喋れるし、怪我もシーラのお陰ですっかり治ったよ」
そう言って私は笑顔を見せると、それを見たシーラはほっとした表情を浮かべる。
「そっか、それならよかった」
すると、まるでタイミングを見計らったかのように、ユウリがシーラの方へと近づいてきた。
「おい」
緊張で強張るシーラを尻目に、いつもの無表情で話し掛けるユウリ。
私はその様子をヒヤヒヤしながら傍観している。
「取り敢えず、礼は言っておく」
「え?」
意表を突かれた言葉に、シーラは思わず聞き返した。
「お前がいなければ、こいつは今頃殺されていたかもしれなかった。ありがとうな」
私を指差し、淡々とだがお礼を言うユウリ。
ええっ!!??
私は驚きのあまり耳を疑った。
あのユウリが、お礼を言った!?
責めるどころかお礼まで言うなんて、天変地異の前触れなんじゃないのだろうか!?
そう思っていたのはどうやら私だけではないらしく、言われた張本人のシーラさえ目を見張らせている。
「えと、その……怒ってないの?」
「何がだ?」
「その……なんで私が今まで呪文を使わなかったのか、とか」
消え入りそうな声でシーラは尋ねるが、当のユウリは何を言っているんだという顔で、
「別にもう過ぎたことだ。それにお前は、こいつが殺され
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