第1部
ポルトガ〜バハラタ
シーラの正体
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「大丈夫か? ミオ!」
懐かしい銀髪に安堵しながら、私は目で頷いた。
その様子を彼は訝しむが、今はそんな場合ではない。
その横では、今しがた電撃呪文を放った勇者が、無表情のままカンダタに向かって剣を抜いていた。
「やはりあのときにとどめを刺しておくべきだったな」
冷徹とも言えるその表情に、瀕死状態のカンダタは、顔面蒼白になりながら声を震わせた。
「まっ、待ってくれ! 実はあるお偉いさんに頼まれてたんだ!! 人身売買も、好きでやってたわけじゃ……」
「そんなことはどうでもいい。潔く捕まれ。もしくは死ね」
「ひっ……!」
容赦ないユウリの一言に、更にカンダタは恐れおののく。そして、なにかに気付き再びユウリに話しかける。
「仲間は……、おれの仲間は……?」
「雑魚どもは一掃して木に縛り付けてある。お前を捕まえたら一緒にロマリアまで送り届けてやるから安心しろ」
「ははっ、てことは、最初からおれに勝ち目なんてなかったって訳か……」
カンダタは諸手を上げ、降参の意思を示した。ユウリは疑うような眼差しを向けるが、どうやら本当に抵抗する気はないようだ。
ユウリは目でナギに合図をすると、荒縄を手にしたナギが無言でカンダタを縛り上げる。
そして今度は、シーラに近づき、低い声で言った。
「お前、何で呪文が使えるんだ?」
その言葉に、シーラの身体がびくついた。ナギも懐疑の目で彼女を見ている。
待って、シーラは私を助けてくれたんだよ? どうして二人ともそんな目でシーラを見るの?
「ごめんなさい。訳は後で話すから、先にミオちんを助けさせて」
俯きながらそう言うと、シーラは私の前まで来ると、しゃがみこんで手をかざし、眼を瞑った。
「キアリー」
彼女の声とともに、身体を蝕んでいた毒が泡のように消えていくのがわかる。
毒消し草でも治らないと言われる毒が、あっという間に消え去ったのを感じた。
続いてシーラは、ホイミの呪文をかけた。毒針を受けた傷がみるみる回復していく。
私はお礼を言う前に、シーラをまっすぐに見つめ、尋ねようとした。
「シー、ラ……。ど……して……」
けれど、毒が消えたばかりの私の身体には、痺れという後遺症が残っていた。口だけではなく、試しに手足も動かそうとしたが、思うように動けない。
「取り敢えずシーラの言うとおり、詳しい話はあとだ。タニアさんはどこだ?」
「ここから少し行ったところで、待ってもらってる」
ナギの問いに、静かに答えるシーラ。彼女の言うとおり、少し離れたところでじっと待っていたのか、グプタさんとタニアさんが固まって座り込んでいた。
グプタさんたちは緊張の糸が解けたのか、涙を流しながらユウリたちにお礼を言った。
「リレミトを使うには、大所帯過ぎるな」
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