暁 〜小説投稿サイト〜
俺様勇者と武闘家日記
第1部
ポルトガ〜バハラタ
人買いのアジト
[7/7]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
に、死……。
 意識までもが途切れ途切れになる。痛みがあるからか完全に意識を失うことはなく、それがかえって苦痛となっていた。
「今度こそお別れだ。残念だったな。お前が勇者の仲間でなければ、お前はおれの――」
 もう、カンダタの声も聞き取れない。目も口も手も足も、少しでも動かせば激痛が走る。
 もういっそ、楽になりたい。そう天に願いながら、私は膝をついた。
 鉄球がビュンビュンと空を切る。その音が消えた瞬間、私はここで生涯を終えるんだ。
 次に思い浮かぶのは、共に旅をしてきた仲間の顔。旅の途中で出会った人たち。そして、家族。
 もう会えないのかと思うと、涙が込み上げてきた。
―嫌だ、死にたくない。
 こんなところで、こんな奴に負けたくない。
 鉄球がこちらに向かって降ってくる。スローモーションのように見えたその攻撃は、頭ではわかっていても避けきれない。
 抵抗する間もなく自分の身体が粉々になる、はずだった。
「??」
 なぜか鉄球は私の目前で宙を舞い、主の手を離れ明後日の方向へ飛んでいく。
―これは、風?
 私の目の前で、突然強風が吹き荒れる。洞窟という密閉空間で、なぜ強風など吹くのだろう。
 風も収まり、主の方へ目をやると、そこには全身血まみれで立っているカンダタの姿があった。
 先ほどと違うのはカンダタだけではない。彼の周囲の地面や壁も、所々引き剥がしたかのように大きく抉られていた。
「てめえ……。何をしやがった!!」
 それは、私に向けられた怒声ではなかった。彼の視線の先には、私の背後にいる者の存在があった。
 私は可能な限り後ろを振り向く。
 そこには、怒りを露にしたシーラが、両手を前にかざしながら立っていたのだった。
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ