第1部
ポルトガ〜バハラタ
人買いのアジト
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に、死……。
意識までもが途切れ途切れになる。痛みがあるからか完全に意識を失うことはなく、それがかえって苦痛となっていた。
「今度こそお別れだ。残念だったな。お前が勇者の仲間でなければ、お前はおれの――」
もう、カンダタの声も聞き取れない。目も口も手も足も、少しでも動かせば激痛が走る。
もういっそ、楽になりたい。そう天に願いながら、私は膝をついた。
鉄球がビュンビュンと空を切る。その音が消えた瞬間、私はここで生涯を終えるんだ。
次に思い浮かぶのは、共に旅をしてきた仲間の顔。旅の途中で出会った人たち。そして、家族。
もう会えないのかと思うと、涙が込み上げてきた。
―嫌だ、死にたくない。
こんなところで、こんな奴に負けたくない。
鉄球がこちらに向かって降ってくる。スローモーションのように見えたその攻撃は、頭ではわかっていても避けきれない。
抵抗する間もなく自分の身体が粉々になる、はずだった。
「??」
なぜか鉄球は私の目前で宙を舞い、主の手を離れ明後日の方向へ飛んでいく。
―これは、風?
私の目の前で、突然強風が吹き荒れる。洞窟という密閉空間で、なぜ強風など吹くのだろう。
風も収まり、主の方へ目をやると、そこには全身血まみれで立っているカンダタの姿があった。
先ほどと違うのはカンダタだけではない。彼の周囲の地面や壁も、所々引き剥がしたかのように大きく抉られていた。
「てめえ……。何をしやがった!!」
それは、私に向けられた怒声ではなかった。彼の視線の先には、私の背後にいる者の存在があった。
私は可能な限り後ろを振り向く。
そこには、怒りを露にしたシーラが、両手を前にかざしながら立っていたのだった。
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