第1部
ポルトガ〜バハラタ
人買いのアジト
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嬢ちゃんだぜ」
じゃらり、と鎖が揺れる音が鳴る。鎖の先には人の顔の大きさくらいの鉄球が繋がれており、もう一方には柄がついている。
その柄を持って鉄球を引きずっている『そいつ』は、私を視認すると、ゆっくりと歩みを止めた。
覆面の下から垣間見えるその表情は、昨日のように軽侮した目ではなく、明らかに殺意を持っている。
ここでカンダタを倒さなければ、私たちが殺されるーー。
そう察した私は、ごくりと唾を飲み込む。
彼の放つプレッシャーに圧され、未だ身動きが取れないでいると、
「前にも似たようなことがあったな。確かその時も、お前と同じ黒髪で……」
そう言って途中で言葉を止め、カンダタは私をじっと見た。
「……そうか。お前、あのとき勇者と一緒にいた仲間か!! はっ、わざわざおれを追いかけて来たってことか!」
皮肉めいた口調で、私の正体を見破るカンダタ。
「残念だったな! 勇者だったら来ないぜ! 今ごろおれたちが張った罠にかかってるだろうよ!」
「えっ……!?」
私は言葉を失う。そんなまさか。ユウリが、盗賊なんかのしかけた罠にあっさりと引っ掛かるわけがない。
「うっ、嘘!! ユウリたちがあんたたちなんかの仕掛けた罠に引っ掛かるはずないもん!!」
カンダタに問い質すが、私は動揺を抑えきれなかった。
「そうか? じゃあなんで、あいつらはここに来ない? それとも、もうお前たちを見捨てたんじゃないのか?」
そういうとカンダタは、下品な笑いを響かせる。
違う。ユウリは、ナギは、私たちを見捨てたりなんかしない。こんな奴の虚言に惑わされてはいけない。
「そっちこそ、一人でここに来たってことは、もう他に仲間がいないんじゃないの!?」
「生憎だが、外のやつらは所用で出掛けてるだけだ。それに、もうすぐ人買いの奴らがやって来る。お前らを逃がさないようにするための人員なんて、おれ一人で充分だ」
そう言い終わると、手にしていた鉄球を振り回し始めた。
まずい、戦闘体勢に入らなきゃ……!
そう体を動かした瞬間、全身に稲妻が走るような痛みが襲った。
「っっ!!」
何……!? この痛みは……?
一瞬意識を失いかけたが、それどころではない。カンダタの攻撃が来る前に、避けなきゃ……。
「お前、おれの仲間の毒針に当たったな? その毒針には、おれの仲間が独自に配合した特殊な毒が塗られていてな、その辺で売ってる毒消し草じゃ消えねえ毒なのさ。最初は気づかねえが、段々痛みと痺れが全身に行き渡り、しまいにゃ激痛でのたうち回るが声も出なくなる。もともと拷問用に開発したみたいだが、お前みたいな小娘には少しばかり酷だったな」
言葉とは裏腹に、少しも憐れむ様子を見せないまま、カンダタは私を見下した目で眺める。
まずい、このままじゃ、本当
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